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2020.11.11
肝炎には急性肝炎と慢性肝炎があります。何らかの原因により、急激に肝細胞が破壊され肝機能に障害を及ぼす病気を急性肝炎といい、多くはウイルスが原因となります。肝炎の原因となる肝炎ウイルスには、A型、B型、C型、D型、E型の5種類があります。A型肝炎とE型肝炎は急性肝炎の原因となり、B型肝炎とC型肝炎は急性肝炎と慢性肝炎の両方を引き起こします。D型肝炎は、B型肝炎にかかっている場合のみ重複してかかる病気です(同時感染する場合もあります)。
そのほか、薬物性肝障害、自己免疫性の肝炎も急性肝炎にあたります。薬物性肝障害は、薬や健康食品が原因となり肝臓が炎症を起こす病気です。
急性肝炎は自然治癒する可能性の高い病気ですが、まれに重症化すると、劇症肝炎、急性肝不全と呼ばれるきわめて重い病態に移行します。
急性肝炎の発病初期は風邪の症状(発熱、倦怠感、頭痛など)で始まるため、しばしば風邪と勘違いされます。初期には自覚症状がないことも多いです。肝炎に特異的な症状は黄疸(血液中のビリルビン濃度が上昇し、肌が黄色くなったり尿が濃くなったりする症状)です。褐色尿で気が付くことが多く、進行すると尿の色はより濃くなり、皮膚や白目が黄色くなります。この時期には食欲不振、吐き気などの症状も出ます。肝炎ウイルスが体内に侵入してから症状が現れるまでの潜伏期は、3~8週間であることが多いですが、B型肝炎では6カ月になることもあります。そのため原因の特定が困難になることもあります。
急性肝炎の診断には、まず血液検査が行なわれます。罹患している場合は、肝細胞内の酵素であるALTやASTの著明な上昇や、黄疸の指標となるビリルビン値が上昇します。さらに、重症度の判断のために血液凝固能検査やアンモニア値の測定も行ないます。
また、各ウイルスに特異的な血液検査を行なうことで、原因ウイルスの特定が可能になります。ウイルスの種類により経過と重症度が異なるため、原因ウイルスの特定はとても重要です。
急性肝炎の発症初期は、特異的な症状がないため発症に気が付きにくいです。倦怠感、食欲不振、吐き気などの普段とは違う症状が持続するときは、受診して血液検査を行なってください。症状が進行して黄疸になると、まず尿の色が褐色になります。血尿が出たと誤解する人もいます。健康チェックとして毎日尿の色に注意することが必要です。さらに、黄疸は進行すると白目が黄色っぽくなります。普段見慣れている自分の顔だと日々の少しずつの変化に気が付きにくく、久しぶりに会った人に黄疸を指摘される場合もあります。毎日明るいところで自分の顔や目を鏡で見る習慣があるといいでしょう。過去数カ月の間に、A型肝炎やE型肝炎の流行地域を訪れた人、豚、猪、鹿などの生肉を摂取したことのある人、またB型肝炎感染の危険を伴う行動の自覚のある人で体調不良が持続するときは受診することをおすすめします。
医療用医薬品、一般用医薬品、漢方薬、健康食品など、さまざまな薬物は肝機能障害の原因になり、誰にでも発症する可能性があります。薬や健康食品を使用していて、倦怠感、発熱、食欲不振、黄疸などの症状が急に現れたときは医師に相談してください。
A型肝炎、E型肝炎は汚染された食品の摂取で感染します。
A型肝炎の予防として、アフリカ、東南アジア、中南米など流行地域へ旅行するときは、生水、生鮮食品の摂取をできるだけ避けることが大切です。より完全に予防するためには、流行地域に行くときにA型肝炎ウイルスワクチン(HAワクチン)の接種が推奨されます。
E型肝炎は北海道や東北を中心に流行がみられ、汚染された豚、猪、鹿などの食肉を十分な加熱処理を行なわずに摂取することで感染した事例報告が多いです。感染予防のため、感染する可能性のある食肉は十分な加熱処理を行なうことが重要です。
B型肝炎、C型肝炎は血液を介して感染します。そこで、他人の血液には触らない、歯ブラシやカミソリは共有しない、性交渉の際はコンドームを着用する、不特定多数と性交渉しない、注射器や注射針は共有しない、入れ墨やピアスは適切に消毒殺菌された器具を使う、などの対策が必要になります。B型肝炎の感染予防としてHBワクチンがあります。2016年からは予防接種法による定期接種も導入されています。なお、B型肝炎、C型肝炎は、入浴、キス、食器の共用、握手などの日常生活行動では感染しません。
薬物性肝障害の予防のために、なるべく余計な薬を飲まないようにすることも大切です。
解説:菱木 智
横浜市南部病院
消化器内科部長・消化器診断センター長
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