社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

A型肝炎

hepatitis A

解説:堀池 典生 (今治第二病院 院長)

A型肝炎はこんな病気

A型肝炎とはA型肝炎ウイルス(HAV)に感染することで発症する肝臓の病気です。急性肝炎はA型肝炎ほかにB型肝炎C型肝炎、E肝肝炎の主に4種類あり、E型肝炎は日本ではまれです。
厚生労働省の発生動向調査でのA型肝炎報告数は年間100~300件でしたが、2018年では925例が報告されました。
HAVは酸、熱、乾燥に強いウイルスでHAV遺伝子型は7種類あり、日本に多いのはIA型です。時に他国で流行した型(IIIA型)もみられます。

感染して2週間経つと糞便中にウイルスが排泄され、手指を介して他の人の口に入ることで感染が拡がります。発症時がウイルス排出量のピークで、その後はすみやかに減少します。
感染は衛生環境に左右され、特に上下水道などの整備が不十分な地域では、乳幼児期を中心とした感染がみられます。
日本での主な感染源は、魚貝類などの生食によると考えられていますが、国外では生鮮野菜などによる感染もみられるので輸入生食材にも注意が必要です。感染者が調理中などに手指を介して食品や水を汚染し、その汚染食品を食べたり飲んだりした場合や、ウイルスに汚染されたカキなどの貝類を生または十分に加熱しないで食べた場合も感染します。また、性感染(特に男性間)にも注意が必要です。

A型肝炎の症状

HAVに感染して症状が出現するまでの期間は2~6週間です。主な症状として、発熱、倦怠感、尿の色が濃くなるなどがみられます。
他の急性肝炎と比べて、発熱、頭痛、腹痛、黄疸などの症状が強いことが特徴です。
乳幼児期ではHAVに感染しても無症状のことが多いのですが、高齢者では重症化し、まれに腎不全や造血障害を伴う場合もあるので注意が必要です。

A型肝炎の診断

血液検査でAST値・ALT値(肝細胞に多く含まれ、細胞が壊れたときに血液中に出てくる酵素)の上昇、IgM型HA抗体(HAV感染初期に出てくる抗体)が陽性であれば、診断が可能です。IgM型HA抗体は発症から3~6カ月間、陽性を持続します。

A型肝炎の治療

HAVに効果のある治療法はありません。安静にすることと、栄養療法が中心で、多くは1~2カ月の経過で回復します。急性の経過で終了して慢性化しないので、肝硬変へ進展したり、肝細胞がんを合併したりすることはありません。

A型肝炎の発生は春から初夏にかけて多くみられます。最近のHAV高浸淫(感染者が多い)地域への渡航歴や魚貝類(カキなど)の生食歴がある人で、発熱や倦怠感、尿の色が濃くなるなどの症状が出たら医療機関を受診するようにしましょう。

一度HAVに感染すると、HA抗体を獲得し再度感染することはない(終生抗体)とされています。日本でHA抗体の陽性率を年代別にみると、50 歳以下はほとんど陰性で、HAVに対する免疫がありません。
したがって、魚貝類の生ものを控えること、うがい手洗いを徹底し、施設内での集団発生や家族内感染が起きないように十分注意しましょう。
東南アジアや、中国、インド、アフリカ、中南米などのHAV高侵淫地域を訪れる際は、事前にHAワクチンの接種しておくとよいでしょう。

堀池 典生

解説: 堀池 典生
今治第二病院
院長


※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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