社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

アルコール性肝炎

alcoholic hepatitis

解説:堀池 典生 (今治第二病院 院長)

アルコール性肝炎はこんな病気

アルコール性肝炎は、アルコール性肝疾患の一つで、長期にわたる大量の飲酒が原因で肝臓に炎症を起こす病気です。アルコール性肝疾患には、脂肪肝、肝線維症、アルコール性肝炎、肝硬変、肝細胞がんがありますが、なかでもアルコール性肝炎は炎症が強い病型です。飲酒量増加をきっかけとして発症し、肝腫大(肝臓の容積が増大する)、腹痛、発熱、黄疸(おうだん=身体が黄色くなる)などの症状が出ます。また、肝機能異常に加えて、白血球数の増加がみられます。

アルコール性肝炎の原因

1日のアルコール摂取量が日本酒換算で2合(純アルコール量約40g)を超えると肝障害などがあるといわれています。2合までは大丈夫という意味ではなく、なかにはこれ以下の量でもさまざまな健康障害を引き起こす人がいます。例えば、「常習飲酒家」(1日平均アルコール摂取量が日本酒換算で3合以上)と「大酒家」(1日平均アルコール摂取量が日本酒換算で5合以上を5日間以上継続している人)はアルコール性肝疾患を発症している可能性が高いです。また、キッチンドリンカー(家事をしながら飲酒することでやめられなくなり、依存症につながる人)も注意が必要です。

アルコール量換算の目安
お酒の種類 アルコール度数 純アルコール量
ビール(中瓶1本500mL) 5% 20g
日本酒(1合180mL) 15% 22g
ウイスキー(ダブル60mL) 43% 20g
ワイン(1杯120mL) 12% 12g
焼酎(1合180mL) 35% 50g

 

アルコール肝炎の診断

肝生検組織像では肝細胞の著明な膨化、肝細胞壊死、アルコール硝子体(Mallory体=肝細胞の脂肪化に伴って出現する小体)、白血球浸潤(炎症部位に白血球が集まり、異物を排除しようとする働き)がみられます。なお、脂肪肝、肝線維症、肝硬変であっても上記のようなアルコール性肝炎の組織学的特徴を満たせばアルコール性肝炎と診断します。

アルコール性肝炎の治療

一番の治療は禁酒で、これにより異常所見の著明な改善がみられます。そのほか、肝庇護(ひご)療法(AST、ALTの数値を下げて炎症をおさえ、肝硬変や肝がんへの進行を予防するための治療)、合併症の治療、栄養価の高い食事をとることが重要です。
一方、禁酒しても症状が持続することがあり、肝性脳症、肺炎、急性腎不全消化管出血などの合併症を伴うと(重症型アルコール性肝炎)致命的な経過をたどります。この場合、ステロイド薬による治療や肝移植が必要となります。

厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」として、男性の場合は1日平均純アルコール量で約20g程度、女性は男性の1/2から2/3くらいの量が適当と推奨しています。飲酒歴に加えて、腹痛、発熱、黄疸などがある人は医療機関を受診するようにしましょう。
アルコール性肝障害はアルコール依存症の人が発症する疾患でもあります。アルコールは膵(すい)臓や脳などにも臓器障害を引き起こします。アルコール依存症は身体的、心理的問題に加えて、暴力を振るう、コミュニケーションがとれないなどの社会的問題があるので、こうした人はより厳格に禁酒を行なわないといけません。

酒は古来より「百薬の長(後漢書)」といわれ、“ノミニュケーション”の機会を与えてくれます。しかし「百薬の長」の後段は「しかし万病の元」と続きます。

アルコール性肝炎をはじめとするアルコール性肝疾患の予防には、節酒、禁酒が重要であることはいうまでもありません。休肝日として週2日は禁酒しましょう。1度摂取したアルコールの代謝には3日かかるといわれているので、総飲酒量を減らすことが大切です。
最近では、飲酒の1~2時間前に服用することで、もっとお酒を飲みたいという飲酒要求をおさえ、飲酒量を減らす節酒薬が使用可能となりました。最終的な治療目的は断酒ですが、断酒に導くための中間的ステップあるいは治療目標の1つとして位置づけられています。

お酒を飲むと、有害物質であるアセトアルデヒドが体内に発生します。この有害物質はALDH(アセトアルデヒド脱水酵素)という代謝酵素によって分解されます。ALDHには、アセトアルデヒドが低濃度のときに働く「ALDH2」と、高濃度にならないと働かない「ALDH1」があり、日本人は「ALDH2」の酵素活性が低い人が多く、アルコールに弱い人種といえます。
代謝酵素のタイプを検査することでアルコールに強いかどうかが分かりますが、検査は一般的ではありません。お酒を飲むとすぐ顔が赤くなる人は、フラッシャーといって日本人に多いアルコールに弱いタイプです。また、最近アルコールパッチテストが市販されているので、気軽にアルコールに対する体質を把握することが可能です。
お酒を飲むことでALDHが増えて多少アルコールに強くなる酵素誘導という現象がありますが、それには限界がありますので、お酒を飲むとすぐ顔が赤くなる人は注意しましょう。

堀池 典生

解説: 堀池 典生
今治第二病院
院長


※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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