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2020.04.22
胆道とは、肝臓で作られた胆汁が十二指腸に流れ出る道で、胆管と胆のうからなる臓器です。
胆道がんは、①胆管がん、②胆のうがん、③十二指腸乳頭部がんの3つに分類されます。
高齢になるほど罹患率が高く、胆管がんは男性に多く、胆のうがんは女性に多いことが分かっています。
初期の自覚症状はほとんどなく、ある程度進行した段階で、尿の色が濃くなる、皮膚や白目が黄色くなる(閉塞性黄疸)、皮膚のかゆみが出るなどがみられます。黄疸が出た場合、血液検査で赤血球の老廃物であるビリルビン値の上昇がみられ、食欲低下や全身の倦怠感、上腹部の違和感や痛みなどの症状が現れます。
身体に大きな負担のかからない低侵襲検査である、血液検査と腹部超音波検査で診断できます。血液検査では、胆道系酵素(γ-GTPやALPなど)や肝酵素(ASTやALTなど)の上昇がみられます。また、腹部超音波検査では、腫瘤(しゅりゅう)や胆管の拡張がみられます。
治療法には、①外科切除、②抗がん剤治療(化学療法)、③放射線治療、④症状緩和治療があります。
根治が望める唯一の治療は、外科切除です。手術の方法はがんのある場所と広がりによって、肝臓を切除する場合、膵臓(すいぞう)を切除する場合、肝臓と膵臓の両方を切除する場合があり、同時に周囲のリンパ節も一緒に取り除きます。多くの場合には、切除した後に胆管やほかの臓器を縫い合わせる「再建」を同時に行ないます。難易度の高い手術なので、手術症例の多い医療機関(ハイボリュームセンター)での手術が推奨されます。
切除が不可能な患者さんには、抗がん剤治療が行なわれます。有用性が証明された標準的な抗がん剤治療があり、外来での通院治療が可能です。
放射線治療は、手術が不可能で遠隔転移のない場合に行なわれることがありますが、その有用性はいまだ明らかではありません。
痛み、吐き気、食欲不振などのさまざまな自覚症状が出た場合には、がんの進行度や治療法にかかわらず、症状を和らげる緩和治療を併せて行ないます。症状が緩和されることにより、治療を適切に行なうことが可能となり、さらに患者さん自身の生活の質も改善します。
全国統計(2016年)では、胆道がんで手術を行なった場合の5年生存率は、胆管がん36.2%、胆のうがん54.1%、十二指腸乳頭部がん63.5%と報告されており、それらは経年的に改善してきています。
早期の胆道がんでは、大部分で自覚症状がありません。腫瘍の増大に伴い、胆汁の流れが悪くなると、多くの場合では、最初に濃い色の尿(尿の濃染)に気がつきます。この時点で医療機関を受診することが大切です。
胆管がんと胆のうがんは、腹部超音波検査で、十二指腸乳頭部がんは、上部消化管内視鏡検査で発見できます。したがって、定期的な超音波検査や内視鏡検査を受けることが、早期発見のポイントです。
胆管がん発症の危険因子として、膵・胆管合流異常症、原発性硬化性胆管炎、化学物質(1, 2ジクロロメタン)にさらされるなどが報告されています。
膵・胆管合流異常症は先天性の病気で、多くは無症状で過ごし、偶然発見されることが多いです。診断が確定した場合は、外科手術が必要です。手術することで、胆管がんが予防できると考えられています。
原発性硬化性胆管炎は、原因不明のまれな難病です。慢性の炎症からがんが発生すると考えられています。
印刷会社で使用される1, 2ジクロロメタンなどの化学物質に直接さらされることにより(曝露)、胆管がんが発生することが明らかになっており、これらへの曝露を避けることが、胆管がんの予防には重要です。
胆のうがん発症の危険因子には、膵・胆管合流異常症、胆のうポリープ、胆のう結石症などがあります。胆のうポリープは、さまざまな病変を含んでいますが、画像診断のみでは良性と悪性の鑑別が難しいと考えられます。一般的には、大きさ10mm以上、増大傾向がある場合、そしてポリープの茎が太い場合には、がんの可能性があり、胆のう摘出術を考慮すべき病態です。
胆のう結石症では、石の大きさが3cm以上で、症状がある結石(有症状結石)、長い結石保有期間が危険因子と考えられています。このような胆のう結石の場合には、胆のう摘出術を考慮すべきです。また、胆のうの中に結石が充満している場合には、胆のう壁の画像評価が難しいため、摘出術を検討する必要があります。
なお、十二指腸乳頭部がん発症の明らかな危険因子は報告されていません。
がんは生活習慣病とも考えられます。がんになりにくい生活習慣を実践することが大切です。がん研究振興財団による「がんを防ぐための新12か条」が提言されています。
1.タバコは吸わない
2.他人のタバコの煙をできるだけ避ける
3.お酒はほどほどに
4.バランスのとれた食生活を
5.塩辛い食品は控えめに
6.野菜や果物は不足にならにように
7.適度に運動
8.適切な体重維持
9.ウイルスや細菌の感染予防と治療
10.定期的ながん検診を
11.身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
12.正しいがん情報でがんを知ることから
以上の生活習慣を心掛けることで、がんになりにくい身体となります。
解説:髙森 啓史
済生会熊本病院
外科部長
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