外傷性脳内血腫

外傷性脳内血腫はこんな病気

外傷性脳内血腫は頭部の外傷によって脳内に出血が起こる病気です。
大脳前方の前頭葉や側面の側頭葉などで起こる「表在性(ひょうざいせい)脳内血腫」と、大脳内側の基底核という部分やその近くに生じる「中心性脳内血腫」に分けられます。

表在性脳内血腫は頭部の陥没骨折や血管損傷が原因で、受傷してから12時間程度は病状が進行することが多いです。大抵は脳挫傷(衝撃で脳に損傷が起こること)や浮腫を伴い、高齢者に多くみられます。

中心性脳内血腫は、脳が揺さぶられて神経繊維の一部が損傷を受ける「びまん性軸索損傷」が原因となります。交通外傷(交通事故での外傷)によるものが多く、小児に多くみられます。発症早期から強い意識障害がみられ、予後はよくありません。

外傷性脳内血腫の症状

表在性脳内血腫は受傷直後からさまざまな意識障害が起こります。ただ、受傷してすぐの時点では意識傷害がなくても、後から悪化する場合があります。血腫の周りの浮腫がはっきりと分かるようになる48〜72時間後に、意識障害や麻痺などの症状が明らかになることもあります。

中心性脳内血腫は受傷直後から意識障害がみられ、長期間続きます。

外傷性脳内血腫の検査・診断

CTやMRIなどの画像検査で出血部位、大きさ、脳の腫れの状態を確認します。
表在性脳内血腫は周囲に脳挫傷や浮腫を伴い、48〜72時間後に明らかになってくることがあります。
中心性脳内血腫は、血腫が小さいことが多く、両側性(脳の左右両側)に発症する場合があります。また、後から遅れて血腫が現れてくる場合もあります。慢性期には脳の萎縮が起こり、脳室拡大や硬膜下水腫(こうまくかすいしゅ)がみられることがあります。

外傷性脳内血腫の治療法

神経症候(患者さんの訴えとその症状を検査で調べた結果)が進行し悪化する場合や、血腫や脳の腫れが拡大し脳圧(頭蓋内の圧力のことで、高くなると脳に損傷が起こったり最悪の場合は生命に関わる)のコントロールが不良な場合は、手術を検討します。手術は開頭による血腫の除去や、挫滅(ざめつ＝強い衝撃などで組織が破壊された状態)した脳の切除を行ないます。

頭部外傷後に以下のような症状がみられる場合は、意識障害が進行して生命にかかわる可能性があるため、すぐに救急病院を受診してください。症状や受傷の原因によっては、救急車を要請することも大切です。

○ 激しい頭痛
○ 気分不快
○ 嘔吐
○ 一時的または継続的な意識障害や麻痺

頭部外傷を起こさないように予防することが大切です。
自動車に乗る際のシートベルト着用、幼児のチャイルドシート利用、自転車に乗る際のヘルメット着用など、頭部の保護を心がけてください。
また、高齢者の転倒、階段などからの転落事故で発症することも多くなっています。転倒予防のため、家の中に手すりをつけたり、屋外では杖やシルバーカーを使用したり、脚立など不安定なものの使用を制限したりすることが重要です。階段を使わなくてもすむよう、生活環境を整えるなどの対策も有効です。