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2015.05.13
良性発作性頭位めまい症とは、頭を動かしたときや一定の頭位をとったときに、視界が回る、もしくは揺れるといった強いめまいが生じ、それに伴う吐き気・嘔吐が特徴の耳の病気です。
耳の構造は、耳介(じかい)から鼓膜までの外耳、鼓膜の奥の空洞の中耳、さらにその奥の内耳(頭蓋骨内)に分けられます。内耳は、バランスのセンサーである前庭・三半規管と、聞こえのセンサーである蝸牛(かぎゅう)で構成されています。三半規管は「外側半規管」「前半規管」「後半規管」の3つの半規管の総称であり、内部はリンパ液で満たされています。 頭部の回転運動により半規管内のリンパ液に流れが生じますが、その流れが半規管の膨れている部分(膨大部)にあるクプラと呼ばれる神経を刺激し、脳に情報が送られることで頭部がどのように動いたかを感知しています。
クプラの位置
三半規管とつながっている前庭には、炭酸カルシウムからなる結晶状の耳石(じせき)が付着していますが、これが脱落し半規管内へ迷入することで良性発作性頭位めまい症が起こると考えられています。 大きく分けて2種類の良性発作性頭位めまい症があり、耳石が管内で移動する半規管結石型と耳石がクプラに付着するクプラ結石型です。
半規管結石型良性発作性頭位めまい症 半規管内に迷入した耳石が、頭位変換(頭の向きを変える)後に重力により管内を移動することで異常なリンパ液の流れが生じてしまい、めまい症状が出現します。耳石の動きが止まったらリンパの流れも止まりますので、頭位変換後、数十秒くらいでめまいが治まります。
クプラ結石型良性発作性頭位めまい症 クプラ(リンパ液の流れを感知する神経)に耳石が付着することが原因のめまい症です。耳石が付着したクプラが横向きになるような頭位をとると、重力によりクプラが刺激され回転するようなめまいが発症します。持続時間は2分以上と長いですが、耳石が付着したクプラが縦向きとなるような頭位(仰向けの状態で少し症状のない側を向く)にすると、めまいは治まります。
半規管結石型とクプラ結石型の膨大部内の様子
良性発作性頭位めまい症は、頭を動かしたときや一定の頭位をとると視界が回る、もしくは揺れるといった強いめまいが生じ、それに伴う吐き気・嘔吐が特徴です。三半規管と接する蝸牛(かぎゅう)という聞こえのセンサーがありますが、良性発作性頭位めまい症では蝸牛に障害が出ないため、難聴や耳鳴りなどの症状はありません。また、他の脳神経や脳にも障害が出ないので、頭痛や構音障害(しゃべりにくさ)、声枯れ、顔面や四肢の感覚異常などの症状はありません。
自然によくなっていくことがほとんどですが、耳石(じせき)が管内で移動する半規管結石型であれば、体操により半規管から結石を排出させることで早く治すことができます。 耳鼻咽喉科では、眼振検査(眼球の動きを調べる検査)を行ない、半規管結石型か耳石がクプラに付着するクプラ結石型かを判断し、それに合った体操を指導することができます(耳石が迷入している管によって体操が異なります)。
良性発作性頭位めまい症は前庭から耳石(じせき)がはがれ落ち半規管に迷入することで起こりますが、その原因として頭部打撲、ウイルス感染、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、運動不足、長時間の側臥位(そくがい:横向きに寝ている状態)などが考えられます。また、メニエール病や突発性難聴などの内耳障害の経過中に、良性発作性頭位めまい症が続発することもあります。 良性発作性頭位めまい症の予防策としては、下記のような方法が挙げられます。
・運動不足にならないよう心掛ける ・長時間の側臥位を避ける(テレビを横になって見ない、決まった向きで寝ない) ・骨粗鬆症の予防をする ・頭部打撲を避ける
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