済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
2020.01.15
頭部外傷後、通常1~2カ月かけて、頭蓋骨の下にある硬膜(脳と脊髄を覆う膜の一つ)と脳の間にじわじわと血液がたまって血腫ができる病気です。血腫が大きくなり脳を圧迫することで、頭痛、物忘れ、認知症によく似た症状(意欲の低下、性格の変化、反応の低下など)、歩きにくさ、片方の手足に力が入らないなどさまざまな症状をきたします。高齢者に多くみられ、人口10万人あたり年間1~2人程度が発症するとされています。
正面から見た脳の断面
脳の片側に血腫が形成されることがほとんどですが、約10%の頻度で両側に形成されることがあります。軽い頭部外傷(打撲など)が原因とされていますが、外傷歴がはっきりとしない場合もあり、酔った状態で転んだ、ドアに軽く頭をぶつけたなど本人が覚えていない場合もあります。
診断は頭部CT、MRI検査にて行ないます。
血腫が小さい場合は自然に治癒することもありますが、極めてまれです。通常は外科的治療が必要となります。
外科的治療の基本は穿頭ドレナージ術です。これは比較的短時間で終了する手術法で、まず、局所麻酔下に頭の皮膚を3cmくらい切開して頭蓋骨に1cmほどの穴を開け、細い管(ドレーン)を入れて血腫を洗浄します。その後、管を入れたまま傷を閉じ、およそ1日、そのままの状態で残った血腫を流出させた後に、管を抜去します。この手術を行なうことで症状が改善し、術後約1週間で退院可能となることが多いです。ただし、10%程度に術後の再発がみられ、血腫が再び増大した場合には再度手術を行なう必要があります。血液をさらさらにする薬(抗凝固薬、抗血小板薬)を飲んでいる人は一般的に再発しやすいとされています。
頭部外傷後に頭痛、物忘れ、認知症のような症状(意欲の低下、性格の変化、反応の低下など)、歩きにくさといった症状が急激に出現したときには、慢性硬膜下血腫を疑う必要があります。脳神経外科の受診をお勧めします。
軽い頭部外傷が発症の原因となることが多く、また、高齢者(60歳以上)、アルコールをよく飲む人、血液をさらさらにする薬(抗凝固薬、抗血小板薬)を内服している人は発症のリスクが上がります。普段の生活で転倒して頭を打たないように気をつけましょう。
解説:丸山 邦隆
富山病院
脳神経外科
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。