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2024.06.05
巨細胞性動脈炎は「血管炎(血管の炎症)」の一種で、主に頭部の血管(特に浅側頭動脈といわれる側頭部の血管)が障害されるまれな病気です。血管の組織を採取し、顕微鏡で観察すると「巨細胞」という多くの核を持つ巨大な細胞がみられるので「巨細胞性動脈炎」と呼ばれています。以前は好発部位が側頭動脈であるため、側頭動脈炎とも呼ばれていましたが、20%程度は側頭動脈ではなく、さまざまな部位の動脈に起こる可能性があるので改名されました。
50歳以上の高齢者に好発し、発症ピークは60代後半〜70代です。女性に多く、男性患者の約2倍とされています。病気の原因は不明ですが、巨細胞性動脈炎に対して副腎皮質ステロイドが効くことなどから、免疫の異常が関与する自己免疫疾患の一種ではないかと考えられています。
全身の炎症に伴う症状と、動脈の炎症で血管が詰まって起こる症状があります。
全身の炎症に伴う症状には、発熱・倦怠感・体重減少・関節痛・筋肉痛などがあります。血管が詰まって起こる症状には、ズキズキと脈が打つような側頭部の頭痛・頭皮痛・視力低下や視野狭窄(視野が狭まる状態)などの眼症状、顎跛行(がくはこう=物をかんでいるときの顎の痛み)、肩や首の痛みなどがみられます。
日本では、巨細胞性動脈炎の患者さんの30%程度が「リウマチ性多発筋痛症」を合併するといわれ、首や肩甲部、上腕、大腿部の筋肉痛を伴います。まれですが、脳梗塞や解離性大動脈瘤、心筋梗塞、長引くせきなどを合併することもあります。
血液検査では、リウマチの炎症度合いを検査する赤沈(せきちん=赤血球沈降速度)やCRP(体内で炎症性の刺激や細胞の破壊が生じると急激に増加するタンパク質成分)の数値で上昇がみられるほか、超音波検査や造影CT、造影MRI、PET-CTなどの画像検査では、大型血管の血管壁の肥厚(ひこう)が確認できます。
確定診断として、側頭動脈の一部を採取して顕微鏡で観察し、巨細胞や血管の炎症があるかを確認する側頭動脈生検を行ないますが、最近は身体に負担がほぼかからない超音波(エコー)検査で代用されることも多いようです。
診断には、1990年のACR(アメリカリウマチ学会)の分類基準を利用することが多いですが、2022年にACR/EULAR(欧州リウマチ学会)から新しい分類基準が作成されており、今後より多く利用されるようになっていくと考えられます。
急性期の治療薬として、最も確実な治療効果を示すのは副腎皮質ステロイドです。通常、推奨されている用量のステロイドで治療を開始し、病状が改善してきたら用量を徐々に減量していきます。ステロイドだけでは効果不十分、もしくは再発を繰り返す場合は、メトトレキサートなどの免疫抑制薬やトシリズマブという生物学的製剤を併用します。ただし高齢者がかかりやすい病気であるため、身体の免疫力低下による感染症へのリスクなど、薬剤の副作用を常に考慮して進めていきます。
「巨細胞性動脈炎の症状」で述べたような自覚症状がある場合、特に50歳以上でこめかみを中心とする頭痛や頭皮痛、顎跛行(顎の痛み)、目の見えづらさを感じた場合は、早めに専門医を受診しましょう。
残念ながら今のところはっきりとした原因は分かっておらず、明確な予防法はありません。
解説: 髙橋 成和
千葉県済生会習志野病院
リウマチ膠原病アレルギー科 部長
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