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2022.08.03
無症候性心筋虚血とは、心臓の筋肉(心筋)に血液を送る動脈の冠動脈が動脈硬化によって狭窄(きょうさく=狭くなること)や閉塞(ふさがること)を起こし、心筋に送られる血液が不十分(虚血)にもかかわらず、胸痛などの自覚症状がない状態のことです。心臓の自律神経障害により痛みを感じにくくなることなどが、無症状の原因といわれています。糖尿病患者さんや高齢者などに多い病気です。
年齢、性別、胸痛の状態、病歴・既往歴、心電図・心臓超音波(心エコー)検査、血液・尿検査などから冠動脈疾患が存在するかどうかを判断します。冠動脈疾患の可能性が高い場合は、冠動脈CTや心筋シンチグラフィ(微量の放射線物質を注射して撮影し、心筋の血流などを調べる検査法)、心臓MRI、詳細な心エコーなど身体への負担が少ない検査を行ないます。
ただ、冠動脈CTでは造影剤の使用量がやや多くなるため、腎機能が低下している人は、腎機能がさらに低下してしまう造影剤腎症という病気になるリスクが高くなります。その場合は冠動脈CTよりも少量の造影剤で可能な心臓カテーテル(冠動脈造影)検査を行なうことがあります。無症状でも冠動脈造影によって主要な冠動脈に中等度以上の狭窄を認め、虚血が疑われる場合は、冠血流予備比(FFR=冠動脈の狭窄の度合いを示す指標)を測定し、病変部前後の圧較差(あつかくさ=血圧の差)を測定することで虚血の有無を確認します。
症状がないため、治療の目的は無症候性心筋虚血によって起こり得る突然死や心不全など心事故の予防になります。
薬物治療としては、血栓形成を防ぐ抗血小板薬、心筋の酸素消費量を減らすβ遮断薬、冠動脈の攣縮(れんしゅく=ひきつって縮まること)を防ぐカルシウム拮抗薬などを使用します。
心筋虚血の範囲が広い場合は手術治療が望ましい場合があります。手術治療としては、カテーテル治療とバイパス手術があります。
カテーテル治療では、手首や足の付け根の動脈からバルーンカテーテル(先端に風船の付いた柔らかい細い管)を挿入し、風船を冠動脈の狭窄部に持ち込み膨らませることで血管を拡張します。再狭窄の確率を低くするために、多くの場合、拡張した部分に金属の網状の管(ステント)を留置します。
バイパス手術は、自身の胸や腕などの動脈、足の静脈を採取し、狭窄部の先に縫合して血液を流す治療方法です。
冠動脈病変の重症度や年齢、基礎疾患の有無などを考慮して最適な治療方法を選択します。
無症候性心筋虚血は、無症状のため重症化して心不全になってしまってから発見されることがあります。喫煙や糖尿病など動脈硬化を起こしやすい病気や要因が複数ある人は、一度循環器内科を受診して、精密検査の必要性について相談してみるとよいでしょう。
また、健診の心電図異常で偶然発見される場合もあるので、定期的に心電図などの検査を受けておくことが重要です。
心筋虚血の原因である動脈硬化を引き起こす高血圧、脂質異常、糖尿病、喫煙、肥満などのコントロールが重要です。禁煙や節酒に加え、減塩、摂取カロリーを適正に維持、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を減らした食事などを心がけましょう。
また、適度な運動は心肺機能を高め、動脈硬化の進展を防ぎます。1回30分、週5日間程度の有酸素運動が推奨されますが、自分に合った強度で行なうことが大事です。
解説:今井 雄太
滋賀県病院
循環器内科 心血管カテーテル治療科部長
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