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2021.09.15
副腎は腎臓の上部に位置する三角帽子のような形状をした臓器です。外側の皮質と内側の髄質からなる二層構造で、「あんこ入りの生八つ橋」というとイメージが付きやすいかもしれません。
副腎の皮質からは、コレステロールを原料としたステロイドホルモンである糖質コルチコイド(いわゆるステロイド)・鉱質コルチコイド・性ステロイドが分泌されています。
ステロイドホルモンは生命の維持、正常な発育や機能に必要不可欠な働きをしています。原発性副腎皮質機能低下症は副腎皮質自体の病変が原因で、これらのステロイドホルモンの分泌が慢性的に低下する病気です。
原発性副腎皮質機能低下症には先天性と後天性があります。
このうち後天性の原発性副腎皮質機能低下症のことを、世界で初めて報告したイギリス人内科医トーマス・アジソンにちなんでアジソン病と呼びます。
アジソン病は結核や真菌(カビ)などの感染症、後天性免疫不全症候群(AIDS)に合併することがあるほか、自己免疫が原因の特発性アジソン病などが代表的です。最近ではがんの治療に用いられる免疫チェックポイント阻害剤の副作用で発症する例も増えています。
副腎皮質ホルモンの低下や欠乏によって、易疲労感(疲れやすく感じること)、全身倦怠感、脱力感、筋力低下、節々の痛み、体重減少、低血圧、発熱などがみられるほか、食欲の低下や吐き気、下痢といった消化器症状、さらに無気力や不安、うつ、意識障害といった精神症状など、さまざまな症状が出現します。
なお、副腎皮質ホルモンが長期的に不足すると、代わりに増加する副腎皮質刺激ホルモンの影響で皮膚や肘、膝などの関節部や爪床(そうしょう=爪が接している皮膚の部分)、歯肉などの口腔内に色素沈着がみられます。
原発性副腎皮質機能低下症を疑う症状がみられた際には、血液検査でホルモン値の異常を確認します。その後、必要に応じて負荷試験(副腎から副腎皮質ホルモンが分泌されるかを確認する検査)を行ないます。
なお、CT検査で腹部を撮影すると、結核の病初期で副腎が腫れていたり、特発性のアジソン病では副腎がしぼんでいたりすることがあります。
治療の基本は不足する副腎皮質ステロイドホルモンの補充です。副腎皮質ステロイドホルモンには、糖質コルチコイドと鉱質コルチコイド、性ステロイドがありますが、日本では食塩摂取量が多いこともあり糖質コルチコイドの補充のみで安定した管理が可能です(必要があれば鉱質コルチコイドの補充も行ないます)。
治療が安定した後でも発熱などの生体ストレスにさらされた場合には、副腎皮質ステロイドホルモンが不足して急性副腎不全(副腎クリーゼ)を起こし、生命が脅かされるなど重篤な状態に陥ることがあります。その際は服用する糖質コルチコイドを通常の2~3倍に増やす必要があります。
糖質コルチコイドの補充は一生涯続ける必要があり、決して勝手に中断しないことが重要です。
意識障害や低血圧、低血糖、強い倦怠感、食欲低下や嘔吐、節々の痛み、続く発熱など原発性副腎皮質機能低下症を思わせる症状が複数同時に出現した際には、この病気を疑います。
なお、この病気によって起こる意識障害は、完全に意識がなくなるとは限りません。それまで普通に社会生活を送っていた人が一日中横になって過ごすようになったり、受け答えはしっかりしているようでも便や尿を漏らすようになったりするなど、社会生活を送ることが困難になります。
さらに病状が進むと最終的には完全に意識がなくなりますが、上記のような意識がなくなる前の段階で気づけると、副腎皮質ステロイドホルモンの補充を早期に開始することができ、結果として重症化を防ぐことができます。
がんの治療として免疫チェックポイント阻害剤の投与を受けている人も注意が必要です。原発性副腎皮質機能低下症は免疫チェックポイント阻害剤による治療開始後2~3カ月程度での発症が多いですが、1週間程度から数年経過したのちの発症もみられます。
また、原発性副腎皮質機能低下症に限らず免疫チェックポイント阻害剤による副作用は、その投与をやめて時間が経ってからでも発症することがあるので、免疫チェックポイント阻害剤による治療を受けたことがある人は、副作用の発症について頭の隅に入れておくとよいでしょう。
基本的に予防はできません。おかしいなと思ったら早めに医療機関に相談してください。
解説:友常 健
宇都宮病院
糖尿病・内分泌内科 主任診療科長
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