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2016.02.03
副腎は左右腎臓の上部にあり、ホルモンを分泌している内分泌器官です。外側の副腎皮質と内側の副腎髄質とに区別され、副腎皮質からはいわゆるステロイドホルモンと呼ばれている糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドおよび性ステロイドを、副腎髄質からはアドレナリンを代表物質とするカテコールアミンが分泌されます。これらのホルモンが十分に分泌されない場合に副腎機能不全が起こりますが、主に糖質コルチコイドおよび鉱質コルチコイドが欠乏すると症状が出現します。
副腎の各名称と分泌ホルモン
糖質コルチコイドの代表的なホルモンであるコルチゾールは、体内に塩分を保持して血圧を維持し、血糖を上昇させる働きがあります。このホルモンが欠乏した場合は、倦怠感が出現して低血圧・低血糖となります。極端に欠乏すると、血圧が維持できずショック状態となり、生命の危険にさらされます(副腎クリーゼ)。また、鉱質コルチコイドの代表的なホルモンであるアルドステロンは、血圧の維持に必要なため、これが欠乏すると低血圧を引き起こします。
副腎機能不全は副腎自体に原因がある「原発性副腎機能不全」と、脳下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌不全が原因である「続発性副腎機能不全」に分けられます。
原発性副腎機能不全の原因は、自己免疫による炎症、結核などの感染、両側副腎出血、乳がんや肺がんなどの悪性腫瘍の副腎転移などがあります。慢性的に副腎全体の機能が低下したものをアジソン病といいます。先天性副腎過形成などの先天的な副腎機能不全もありますが、頻度はまれです。ACTHは脳下垂体より分泌され血流を介して副腎皮質を刺激しているホルモンです。間脳下垂体に発生する腫瘍、炎症、頭部外傷などで分泌が低下し、続発性副腎機能不全を引き起こします。
治療には、欠乏したホルモンを内服薬や注射で補充する「ホルモン補充療法」を行ないます。
副腎機能不全は全身倦怠感、食欲不振、脱力、体重減少といった症状が出現しますが、特徴的な症状がないため早期発見が難しい病気です。基本的には、血圧が低い、血糖値が低い、血液検査で血清ナトリウム値が低いといった症状で、副腎機能不全を疑います。そして、疑わしい場合はホルモンの濃度を測定して診断します。
感染症にかかったり、手術をするなどで体にストレスがかかった場合、糖質コルチコイドの代表的なホルモンであるコルチゾールが、通常の何倍も分泌されます。そのため、普段ホルモンが足りていても、病気になったときに欠乏状態となり、副腎機能不全を発症する場合があります。風邪をひくといつも長引いてしまう人は、副腎機能が正常かどうか検査した方がいいでしょう。また、間脳下垂体に原因がある場合は、副腎機能不全の症状以外に、間脳下垂体から分泌されている他のホルモンの欠乏あるいは過剰分泌による症状(母乳が出る、月経不順など)や、腫瘍による症状(頭痛、物が見えにくいなど)を合併することがあります。
なんらかの病気を患い血液検査を行った際に、血圧が低い、血糖値が低い、血清ナトリウム値が低い、血清カリウム値が高いといった検査値の異常を同時に指摘された場合は、副腎機能検査をおすすめします。すでに副腎機能不全と診断されて「ホルモン補充療法」を受けている場合は、病気になったときに内服量を増やす必要があります。通常、内服量を2~3倍に増量しますが、どのようなときにどのくらい増量するかは主治医から具体的な指示をもらっておきましょう。
また、膠原病などでステロイド治療を長期間行なっている場合は、自身の副腎機能が低下してしまっている場合があります。このような人が急にステロイド薬の内服を中断すると、ホルモンの欠乏状態となり副腎機能不全を発症します。内服は中断せず、減量は主治医と相談しながらゆっくりと行なってください。
解説:市野 功
福岡総合病院
糖尿病・内分泌内科主任部長兼内科統括主任部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。