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2021.03.24
副腎は腎臓の上に1つずつあり、皮質と髄質で構成されます。副腎皮質では主にアルドステロン、コルチゾール、副腎髄質ではアドレナリン、ノルアドレナリンなどのホルモンが作られています。
副腎皮質の細胞から発生する悪性腫瘍を副腎がんといいます。また、副腎髄質からも悪性褐色細胞腫や神経芽細胞腫といった悪性腫瘍が発生することがあります。
副腎がんは、罹患率が100万人に2人程度という珍しいがんです。副腎がんにかかりやすい年齢は10歳前後と40~50歳代で、女性は男性に比べて1.5~3倍多くなります。
なお、原発性アルドステロン症やクッシング症候群など、副腎にできる腫瘍を総称して副腎腫瘍と呼びますが、この場合はほとんどが良性腫瘍を指します。副腎腫瘍が悪性化して副腎がんに変化することはないといわれています。
早期の段階では特徴的な症状がないことが多く、発見時には腫瘍の大きさが5cm以上になっている場合がほとんどです(3cm未満であれば、ほとんどが良性の副腎腫瘍です)。
がんが大きくなってくると、次のような症状がみられます。
身体の外から腫瘍に触れて気づくほか、超音波検査やCT検査などで偶然発見されることもあります。
血液検査・尿検査
体内に分泌されるホルモンの濃度を確認するために血液検査や尿検査を行ないます。副腎がんでは、アルドステロン、コルチゾール、DHEA-S(デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩)など副腎皮質で作られるホルモンが異常に高い値を示すことがあります。また、アルドステロン症(通常は良性の副腎腫瘍によって発症)では、血清カリウムなどの電解質が低くなります。なお、DHEA-Sは副腎がんの腫瘍マーカー(がんの診断や経過の指標)として有効な場合があります。
CT検査・MRI検査
がんの症状や進行度、転移の有無などを確認するために、造影剤を使用したCT検査やMRI検査を行ないます。
副腎がんでは以下のような所見が特徴的です。特に、腫瘍が造影剤でよく染まり、時間経過後も造影剤で染まっている場合は副腎がんの可能性が高いです。
・腫瘍の周辺が不規則
・腫瘍内部が不均一に造影される
・たまに石灰化が認められる
同時に、リンパ節転移、肺・肝転移などについての診断を行なうことも可能です。
核医学検査
異常に多くのホルモンを作るタイプの副腎がんでは、各種シンチグラフィが診断に有用な場合があります。シンチグラフィとは、微量の放射線を出す薬(放射性医薬品)を投与し、その体内分布などを画像化する検査方法です。
手術
副腎がんは悪性度が高く、急速に進行し、5年生存率は16~44%とされています。手術以外には有効な治療法がありません。そのため、転移がなければ手術を行ないます。手術で完全にがんを切除できれば、予後(生存率)の改善が期待できます。
薬物療法
副腎皮質がんの他臓器への転移がある場合、副腎皮質ホルモン合成阻害薬(ミトタン)による薬物療法が考慮されます。
ミトタンの使用により80%以上の患者さんに何らかの副作用が起こります。中でも食欲不振、吐き気をはじめとする消化器症状や肝機能障害が多く報告されています。ミトタンは正常な側の副腎にも抑制的に作用するために、副腎皮質ホルモンの補充が必要になる場合があります。
なお、抗がん剤による治療は確立していません。
「医学解説」で記したように、副腎がんは早期の段階では特徴的な症状がないため、早期に発見されることは少ないです。場合によっては超音波検査やCT検査などで偶然発見されるケースがあります。
副腎がんはまれながんで、原因ははっきりとは判明していません。特に有効な予防法もありません。そのため、発見後はすぐに治療を行なうことが重要になります。
解説:山口 法隆
川口総合病院
腫瘍内科主任部長
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