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2016.03.30
腎盂尿管がんは膀胱より上流の尿の通り道にできる比較的まれな悪性腫瘍です。50~70代に多く認められ、男性のほうが女性の2倍以上発症頻度が高い病気です。腎盂がんと腎細胞がんは同じ腎臓にできるがんですが、その性質や治療法は大きく異なります。
腎盂と尿管の構造
造影剤を注射して尿路に排泄されるまで待って撮影する、CT尿路検査(CT Urography)が最も有用です。CTやMRIなどの画像診断に加えて、尿細胞診検査(尿のがん細胞の有無を確認する検査)や、尿管鏡下腫瘍生検(内視鏡で腎盂・尿管の様子を観察し、異常が疑われる部分の組織を採取し調べる検査)などを複合的に組み合わせることで、病理病期予測向上の試みがなされています。なかでも、術前画像診断における水腎症(腎臓で作られた尿の流れが阻害され、腎臓や尿管の中に尿がたまって拡張した状態)の有無・程度が、腫瘍の深達度・悪性度と関連していることが最近の研究で明らかになってきています。
手術で腎臓から尿管、膀胱の一部分まで大きく一塊にして摘出する必要があります。従来の開放手術では上腹部と下腹部の2カ所に傷が及び、患者への侵襲が大きな手術でしたが、近年では身体への負担が少ない腹腔鏡による手術を積極的に行なっています。腹腔鏡手術は、開放手術に比べて出血量や術後の疼痛(とうつう/痛み)、入院期間の短縮がみられるという報告が多く、治療効果においても差がないとされています。
転移・再発例においては、抗がん剤や放射線などさまざまな治療法を組み合わせる集学的治療が必要となります。
人間ドックの超音波検査など、画像検査で偶然発見されることも多くありますが、血尿や尿の通過障害による背部痛など自覚症状がある場合もあります。このような症状がある場合は、早めに泌尿器科専門医の診察を受けるようにしてください。
腎盂尿管がんの最も重要な危険因子は「喫煙」です。喫煙者は非喫煙者と比べ3倍の腎盂尿管がんの発症リスクがあり、長期の喫煙者(45年以上)においてはそのリスクが7.2倍に増加するといわれています。また、過去に喫煙歴のある患者においても、非喫煙者と比べ2倍のリスクを有するといわれています。
また、再発を予防するためにも、禁煙を徹底することが重要です。腎盂尿管がんの術後に膀胱がんとしてがんが再発することも珍しくありません。主治医の指示にしたがって、定期検診を受けましょう。
解説:伊藤 祐二郎
中央病院
泌尿器科
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