済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
世の中には、栄養補助食品としてサプリメントがあふれています。「疲労回復に効果があるビタミン剤」「不足しやすいミネラルが一度で摂れる」など、その内容はさまざまです。万能薬のように見えますが、果たしてそうなのでしょうか?
ビタミンががんを減らす効果があるのかを調べるために、喫煙者または喫煙歴がある人と、職場環境にアスベストがある労働者という肺がんリスクの高い1万8000人以上を対象とした実験がアメリカで行われました。半数は「ベータカロチン15mg」と「ビタミンA25,000国際単位(IU)」の錠剤を、残り半数は偽の薬を飲み続けるというものです。
しかし、この実験は予定より2年早く、1995年末に終了しました。1996年に報告された結果によると、ベータカロチン15mgとレチノール25,000国際単位(IU)を共に毎日補給すると、肺がんの増加、およびあらゆる死因による死亡(総死亡率)の増加が見られることが示されました。
この実験では、ビタミンの摂りすぎは、がんの発症を防ぐどころか、発症率を上げてしまう結果となったのです。2004年の報告によって、この有害作用は補給をやめてからも最大6年間持続することが明らかになりましたが、肺がんリスクおよび総死亡リスクの上昇は統計学的に有意なものではなくなっていました。このように、サプリメントの飲みすぎは、場合によっては身体に悪影響を与える可能性があるのです。
引用文献
米国国立癌研究所(NCI:National Cancer Institute)
原文 http://www.cancer.gov/cancertopics/factsheet/prevention/antioxidants
引用元 『海外癌医療情報リファレンス』 http://www.cancerit.jp/26349.html
Gary Goodman,Mark Thornquist(1996)「Carotene and Retinol Efficacy Trial(CARET)」,
[online] http://epi.grants.cancer.gov/Consortia/members/caret.html(参照2014-11-25).
特定の栄養素をたくさん摂ることが健康につながるわけではありません。むしろ、過剰摂取が健康に害を及ぼすこともあります。自動車を例にして考えると、ハンドル1個、タイヤ4個で十分なのに、ハンドル3個、タイヤ6個と無駄に装備を増やすようなものです。人間の身体も同様で、過剰な装備は、余分な荷物となるだけでなく、事故の原因にもなりかねません。必要な量の栄養を摂って、スムーズに走れる自動車を目指すべきです。
1回飲むだけで疲労回復に効いたり、病気を予防できるといった魔法のような薬はありません。急がば回れ! サプリメントで安易に栄養を補おうとするのではなく、栄養バランスのよい食事を長く続けることが健康への近道です。ただし、「サプリメント=悪」というわけではありません。日々の食生活で、どうしても不足しがちな栄養がある場合は、サプリメントで補うのも一つの方法です。やみくもに飲むのはよくありませんが、自分にどの栄養素が足りていて、何が不足しているのかをしっかり把握して上手に利用すれば、サプリメントは心強い味方になるのです。
中村 康
中央病院
栄養管理科 科長