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2016.04.06
膀胱がんは、膀胱の内側にある尿路上皮(移行上皮)粘膜より発生する悪性腫瘍で、空間的・時間的多発性という特徴を持っています。診断時にすでに膀胱内で多発していることや、内視鏡下による完全切除後に膀胱内再発を認める頻度の高い病気です。
膀胱の位置
尿検査で尿潜血陽性(尿にわずかでも血液が混じっている状態)が指摘された際には、超音波検査と尿細胞診検査(尿のがん細胞の有無を確認する検査)をします。肉眼で見える量の血尿があった際には、内視鏡やCTを行ないます。膀胱内に腫瘍が認められると、CTやMRI検査を行なって病期を診断します。
内視鏡検査でみた乳頭状に発育する膀胱がん
経尿道的に膀胱腫瘍を切除する手術を行ないます。内視鏡で切除可能ながんであった場合は、手術後、再発予防のために膀胱内へ薬剤を注入します。これは、週1回、計6~8回のスケジュールで行なわれます。
一方、内視鏡にて切除不可能であった場合は、膀胱をすべて摘出する必要があります。摘出後には新しい尿の通り道を再建する必要があり、さまざまな方法があります。最も一般的な方法は、小腸の一部分を尿の通り道とする「回腸導管」という方法です。根治性が高く、術後のトラブルも少ないですが、永久にストマ(尿の排泄のため、腹部に増設する排泄口)の管理をする必要があります。その他、自身の尿道を温存し、小腸を袋状に形成して尿を溜める袋として使用する「代用膀胱」という方法もあります。この方法ではストマの管理は不要ですが、自力での排尿が困難になる場合も多く、自己導尿やカテーテル管理を要する場合も少なくないという問題があります。がんの状態や自身の社会的背景も考慮して、医師と相談しながら最適な治療法を選択することが大切です。
排尿時の痛みや違和感などで医療機関を受診し、膀胱がんが見つかる場合もありますが、症状を伴わない血尿がきっかけで発見されることも多くあります。尿検査での尿潜血陽性(尿にわずかでも血液が混じっている状態)も重要な発見契機ですので、指摘された際は泌尿器科で精密検査を受けることが望ましいです。
膀胱がんの危険因子としては「喫煙」が最も重要で、現在喫煙している人は吸わない人に比べ4倍、過去に喫煙歴のある人は2~3倍膀胱がんになりやすいことが判明しています。そのため、予防には長期の禁煙が有効であり、10~30年の禁煙で喫煙経験がない人たちと同等のリスクになるといわれています。
また、すでに膀胱がんの治療を受けている人においても、禁煙したかどうかで再発・進展のリスクに差があるとする研究結果が近年報告されています。膀胱がんは大変再発しやすいがんです。主治医の指示にしたがって、定期検診を欠かさないことも大切です。
解説:伊藤 祐二郎
中央病院
泌尿器科
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