済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
がんの3大治療は外科手術、化学療法(薬物療法)、放射線療法です。このうち例えば腹部の外科手術であれば、開腹手術と腹腔鏡(ふくくうきょう)手術があります。近年注目の「ロボット支援手術」は腹腔鏡(内視鏡)手術の一種で、医師がロボットを操作して行なう手術です。
現在最も普及している手術支援ロボットは90年代にアメリカで開発された「ダビンチ」。最新機器の「ダビンチXi(エックスアイ)」は第4世代です。医師が4本のアームを遠隔操作し手術を行ないますが、モニターには高画質の3次元立体画像が映し出されるため細部まで鮮明に見え、拡大も自由自在。アーム先端に装着した器具・鉗子(かんし)には手首のような関節機能があり、人の手や指では不可能な曲げ方や回転も可能で、より深い場所で精緻な作業を行なうことができます。
手術支援ロボット「ダビンチXi」のシステム
アームの先端には3Dカメラが取り付けられている
医師は操作部のモニターで3D画像を見ながら手元のレバーで4本のアームを操る
ロボット支援手術の技術を動画でチェック!
横浜市東部病院では、ダビンチのアームの動きや折り鶴が折れるなど、驚きの手技を動画で紹介しています。
患者さんの状態やこれまでに受けた手術などによりますが、まずは担当医や十分な手術実績のある医療機関に相談して、自分のケースがロボット支援手術の対象になるかを確認しましょう。
ロボット支援手術で健康保険適用される疾患は以下です。
前立腺がん、腎細胞がん、膀胱がん、腎盂がん、尿管がん、副腎腫瘍、腎盂尿管移行部狭窄症、食道がん、胃がん、大腸がん、直腸がん、膵体尾部腫瘍、膵頭部腫瘍、肝臓がん、良性子宮疾患、子宮体がん、骨盤臓器脱、肺がん、縦隔腫瘍、心臓弁膜症
※ただし、厚生労働省が定める施設基準を満たしているかどうかで、医療機関ごとに実施している手術の種類が異なります。
保険適用で手術を受ける場合は、自由診療時の負担額からは大幅に下がり、通常の腹腔鏡手術とあまり変わりません。また、患者さんの年齢や収入、健康保険制度によっても負担割合が異なります。高額療養費制度を利用すれば、負担額はさらに下がります。
→前立腺がんの場合、70歳未満・保険適用による3割負担で45万円程度(高額療養費制度で10万円前後)が目安。
A: 当院では約1500件の手術実績がありますが、今まで手術続行不可能になった例はありません。停電の場合はバックアップ電源があり、仮にシステムダウンが起こった場合でも、開腹手術に切り替えるため続行可能です(ロボット支援手術が続行不可能なシステムダウンの可能性は、海外の報告によれば0.05~0.4%程度)。
前立腺がんを例に、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術それぞれの違い(メリット・デメリットなど)を下記にまとめました。
開腹手術 | 腹腔鏡手術 | ロボット支援手術 | |
---|---|---|---|
傷口 | 大きい | 小さい(4カ所) | 小さい(5、6カ所) |
出血 | 多い | 少ない~中程度 | とても少ない~少ない |
合併症・感染症のリスク | 中程度~高い | 低い~中程度 | 低い |
術後の痛み | 大きい | 少ない | 少ない |
術後の尿漏れ | 回復が遅い | 回復がやや早い | 回復が早い |
勃起機能の温存率 | 低い | 中程度 | 中程度~高い |
がんの摘除率 | 低い~中程度 | 中程度 | 中程度~高い |
A: 腹腔鏡手術は難易度が高い手術ですが、ロボットを使えば安全で精度の高い手術ができます。例えば、血管が複雑に交錯して見えづらい場所や、手が入りにくい狭い箇所でもアームが自在に動き、手ブレ防止機能もあるため、周囲の血管や神経を傷つけるなどのリスクが減ります。縫合も素早くできるので時間短縮になります。
ロボットというと無機質なイメージがありますが、動かすのは人。そしてロボットのアームは人の手より関節の動きに制限がありません。3本のアームが助手の手の代わりとなり、自分の意志のままに動かせます。カメラを装着した4本目のアームは向きや角度も自由に変えられるので、従来はできなかった横からも患部を覗くことができます。
ロボット支援手術は難易度が高い手術ほどその効果を発揮します。傷口が小さく出血も少ないため、身体への負担が少なく、術後の回復が早い。また術後の合併症も起きにくく、機能温存もしやすい、そしてがんの取り残しも少ない。つまり、患者さんのQOL(生活の質)向上につながります。
「私たちも精度と安全性が高い手術を安心して行なえるので、そのよさを広く一般にも知ってもらいたいと考えています」。
解説:石田 勝
横浜市東部病院
ロボット手術センター長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。