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2016.04.15
神経因性膀胱とは、その名の通り、神経の異常が原因で起こる膀胱機能の障害のことです。ヒトの身体は、全身に張り巡らされている神経支配によってコントロールされており、膀胱の支配神経が障害されると多様な症状が出ます。尿が近くなったり(頻尿)、逆に尿意を感じずにいくらでも膀胱に尿がたまったり(尿意の喪失)、尿の勢いが低下したり、などさまざまです。
自力で尿を出せなくなった場合は、「自己導尿」という手法を勧めることがあります。時間を決めて、自分でカテーテルを尿道に差し込み、排尿するやり方です。大抵の人が拒否感を示しますが、カテーテルを入れっぱなしにするか、自己導尿をするかの二者択一を迫られます。どちらも嫌だという理由で排尿管理を怠ると、腎不全や、尿路感染を引き起こし、深刻な結末を迎えることになります。
神経因性膀胱という病名は、神経の異常と膀胱機能の異常の因果関係が証明できないと成り立ちません。原因となる具体的な病気としては、脳卒中、糖尿病による神経障害、脊髄損傷、腰部脊柱管狭窄症、先天性の二分脊椎、パーキンソン病、多発性硬化症などが挙げられます。大腸がんや子宮がんの手術による神経障害によって起こる神経因性膀胱もあります。
実際の臨床の現場では、原因となる神経障害を特定できないことも多く、原因不明の膀胱機能障害を神経因性膀胱としている場合が多くみられます。これらは本来、神経因性膀胱の疑いの段階です。真の神経因性膀胱を適切に診断できれば、原疾患の治療も可能となり、それにより神経因性膀胱も改善に向かう場合もあるでしょう。しかし、逆の場合、すなわち、安易に神経因性膀胱と診断した場合は、原疾患の診断に至らないばかりか、場合によっては生命にかかわってくることもあります。適切な治療・管理が行われないと、尿路機能障害、つまり腎不全や、尿路感染症による敗血症などを発症する可能性があります。
1日の排尿回数が異常に多かったり、異常に少なかったりする場合は注意が必要です。膀胱の神経が障害されると、やがては膀胱が尿を押し出す力が弱くなります。そうなると、尿の残り(残尿)が増加します。最初から膀胱にある程度尿がたまっている状態ですので、新たに尿をためるスペースが小さくなります。これを「機能的膀胱容量の低下」といいます。この場合は1回排尿量の減少と、頻尿が現れます。
尿意を感じることができなくなると、膀胱には尿が極限まで溜まります。これを「尿閉」といいます。この状態で膀胱に尿が新たに加わると、尿があふれて漏れてきます。これを「溢流性尿失禁」といいますが、尿道抵抗を下げることで症状が改善することから「奇異性尿失禁」とも呼ばれてきました。このように、極端な排尿回数の増加または減少には注意をして、早めに医療機関を受診することが大切です。
神経因性膀胱は何らかの神経の異常で起こる膀胱機能の障害ですので、基本的に予防は難しい病気です。しかしながら、原因によっては予防可能な場合もあります。例えば、糖尿病性神経因性膀胱は、糖尿病の管理を怠った場合に発症または重症化しますので、原疾患である糖尿病の治療が重要となります。
解説:高野 徳昭
八幡総合病院
泌尿器科
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