社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2019.10.30

間質性腎炎

interstitial nephritis

解説:町田 健治 (みすみ病院 腎臓内科医長)

間質性腎炎はこんな病気

腎臓は血液をろ過し尿を作り出す臓器です。腎臓に集められた全身の血液は、糸球体(毛細血管の塊)で老廃物がろ過されます。この過程でできた原尿(尿のもと)のうち身体に必要な物質(水分や栄養素など)は尿細管で体内に吸収され、残りの不要分は尿として尿管を通って体外へ排出されます。腎臓内の糸球体や尿細管をとりまく組織を間質と呼び、この部分に炎症が起こることで腎機能低下をきたす病気を間質性腎炎といいます。間質だけでなく尿細管にも炎症が起こっていることが多く、尿細管間質性腎炎とも呼ばれています。

尿を作り出すしくみ

間質性腎炎の原因

間質性腎炎は、急性と慢性に分けられます。急性間質性腎炎は薬剤過敏症(アレルギー反応の一種)によるものが最も多くみられます。さまざまな薬剤が原因となりますが、主に抗菌薬や消炎鎮痛薬(痛み止め薬)で起こりやすいとされています。そのほかの原因としては、急性腎盂腎炎などの感染症や、免疫異常、重金属(水銀、カドミウム、鉛など)などがあります。慢性間質性腎炎もほぼ同様ですが、薬剤や感染症(慢性腎盂腎炎など)、免疫異常のほか、低カリウム血症や高カルシウム血症などの電解質異常、 高尿酸血症(血液中の尿酸値が高く痛風などを引き起こす状態)などの代謝異常、悪性腫瘍、遺伝性疾患などが原因となります。

間質性腎炎の症状

急性間質性腎炎は無症状の場合が多いですが、腎臓が腫れて背中に痛みを生じることがあります。薬剤によるアレルギーが原因の場合は、発疹発熱が出ることもあります。
一方、慢性間質性腎炎では、間質の炎症だけでなく線維化(硬化)によって腎機能が緩やかに低下していくことがあり、貧血を合併する場合もあります。また、尿細管が傷つくことで、尿を作り出す過程での濃縮や、電解質(ナトリウムやカリウム)や酸の調整・排出がうまくできなくなります。そのため、脱水症状を引き起こしたり、高カリウム血症やアシドーシス(血液中の酸が増加した状態)を生じたりすることもあります。

間質性腎炎の治療

原因の除去や、原因となっている病気を治療します。薬剤が原因で発症した場合は、その薬剤の使用を中止します。炎症を抑えるためにステロイド薬を使用することもあります。腎盂腎炎などの感染症が原因の場合は、抗菌薬で感染症を治療することが大切です。
脱水や電解質異常の症状がみられたら、点滴や内服薬などで補正の治療を行ないます。

健診時の尿検査で軽度尿蛋白や尿糖(尿中にたんぱく質や糖分が含まれること)、無菌性膿尿(尿中に白血球が多く含まれている状態)を指摘され、精密検査で間質性腎炎が発見されることがあります。また、発疹発熱も発見のきっかけとなります。
血液検査で腎機能の低下がみられた場合、間質性腎炎を発症している可能性があります。早期に発見し、早期に治療することで腎機能の改善につながります。口の渇きや脱水症状を起こしやすくなったと訴える患者さんの中には、間質性腎炎によって尿の濃縮力が落ち、多尿となっている場合がみられます。
慢性の経過で症状がないうちに腎機能が徐々に低下することもあるので注意が必要です。

間質性腎炎の主な原因として、抗菌薬や消炎鎮痛薬などの薬剤や腎盂腎炎、高尿酸血症などがあげられます。特に消炎鎮痛薬は市販されていて購入しやすいのですが、必要以上に長期服用するのは避けてください。腎盂腎炎は、膀胱炎を引き起こした細菌が尿管を逆行して腎臓に到達することで生じます。腎盂腎炎を起こさないように、水分をしっかりとって膀胱炎を予防しましょう。
尿酸値が高い人は、アルコールやレバー、魚卵を控える食事療法や、必要に応じて薬物療法を行ない、尿酸値を下げましょう。
間質性腎炎と診断された、または疑いがある人は、現在内服中の薬剤(市販薬や漢方薬、ハーブなど)を医師に伝え、発症の原因となるものがないか相談する必要があります。

解説:町田 健治

解説:町田 健治
みすみ病院
腎臓内科医長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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