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2016.11.02
痛風は、尿酸塩が関節内で結晶化して沈着することが原因で起こる関節炎を主な症状とする病気です。古代エジプトのパピルスに記載が既にあり、ギリシャのヒポクラテスの書には「裕福な上流階級の中年男性」に起こるとされます。痛風という名は、中国南北朝時代(6世紀ごろ)の薬物書に登場し、本邦では禅僧が書いた「福田方」(14、15世紀)という医学書に初めてその名が出てくるそうです。19世紀以降の近代医学的には、尿酸という物質の分解・生成状態によって起こる全身疾患であることがわかり、慢性腎臓病(痛風腎)、尿路結石、メタボリック症候群の合併も重要視すべき点です。
痛風の原因となる尿酸(分子式:C5H4N4O3)は、遺伝子を構成するDNAやエネルギー源であるATPなどの老廃物です。人類および一部の霊長類においては、尿酸を分解できないので、腎臓から排泄した残りは体に残ってしまうのです。
痛風の関節炎には「痛風発作」で有名な急性関節炎と、あまり強くない痛みが持続する慢性関節炎があり、後者は痛風結節や関節の変形を生じることもあります。痛風発作は足の親指の付け根に最も多く、足の甲、足首、かかとに生じることが多いのですが、手に生じることもまれにあります。典型的な発作は、突然急激にある一つの関節が痛み、半日以内に痛みは最高点に達し、痛む関節が赤く腫れて熱を持ちます。治るまでに3~14日を要するもので(急性単関節炎)、その直前に「予兆」とされる関節の違和感がある場合もあります。
炎症を起こした関節の中にたまった液(関節液)を針で採取し、顕微鏡で観察することにより、痛風発作の原因である尿酸塩結晶が確認された場合や、慢性痛風の痛風結節を認める場合は診断確定です。これら以外では、医師の診察(問診・身体所見など)、画像検査(レントゲン・エコーなど)、高尿酸血症(尿酸の濃度が高いこと)の存在から診断しています。
関節炎の治療と尿酸値(尿酸の濃度)を下げる治療に大別されます。痛風発作時には消炎鎮痛剤で治療し、これがおさまってから尿酸値を下げる治療をします。尿酸値が低いまま維持されると、痛風発作および尿路結石・慢性腎臓病などの合併症を起こす危険を下げることができます。
痛風は尿酸という物質の分解・生成状態によって起こる病気です。血液中の尿酸値が高いほど、発症の危険性が上がり、高尿酸血症は痛風の予備群と言えます。高尿酸血症は健康診断などの簡単な血液検査で分かります。体質(遺伝素因)および生活習慣により生じるので、近親者に痛風の方がいれば、自身の尿酸値も高いかもしれません。また、上記の痛風発作の症状に近いものがあれば、早期受診をお勧めします。
痛風発症の危険因子
30~45歳男性、肥満、高血圧、慢性腎臓病、常習的大量飲酒、過食、肉・魚・果糖飲料の大量摂取習慣、利尿剤の服用など
危険因子を複数持っている場合、尿酸値を測定し、高尿酸血症があれば、食事制限・運動励行・飲酒制限・肥満解消を含む生活習慣の改善を試みるべきでしょう。食事療法は、尿酸の材料となる「プリン体」および「過剰な果糖」の摂取制限と、尿からの尿酸排泄を促すことの両者から成ります。前者として、高プリン食の制限(レバー・魚の干物)、果糖飲料などの果糖過剰摂取制限、ビールなどのプリン体を多く含むアルコールの制限があり、後者として飲水の励行(1日尿量2Lを目標とする)野菜などのアルカリ性食品(果物は果糖摂取に注意)の摂取を勧めます。アルコールの中では、ビール>ウイスキーなどの蒸留酒>ワインの順にリスクが高いとされています。適度な運動と肥満の解消も併せて推奨されます。
解説:中澤 隆
大阪府済生会中津病院
膠原病内科部長
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