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2017.03.27
血圧はポンプの役割を担う心臓の収縮によって、血液が全身に送り出される際に血管に加わる圧力のことです。心臓が収縮する力と、身体の各部分に血液を分配する血管の硬さ、血管内の血液量などによって血圧の値が規定されます。これらの規定値が低いと低血圧になりやすいわけですが、生活習慣病の一つとして、将来の脳心臓血管病変の発症を防止するため基準値が詳細に決められている高血圧と比較し、低血圧には明確な診断基準はなく、一般的に収縮期血圧が100mmHg以下をもって低血圧とすることが多いようです。
低血圧は大まかに次のように分類されます。
分類 | 特徴 |
---|---|
本態性低血圧 | 特に原因となる疾患がなく血圧の低い状態が継続し、しばしば両親とも低血圧、自己は痩せ型の無力体質者に認める |
症候性低血圧 | 心臓血管疾患、内分泌疾患、代謝疾患、血管内の循環血液量が減る出血・貧血・脱水・広範な火傷、血圧を下げる薬剤の使用など、血圧低下の原因を認める |
起立性低血圧 | 横になった姿勢では低血圧を示さず、急に座ったり立ったり体位変換をした時に血圧低下を認める |
また、長時間同じような状態が継続する慢性低血圧、短時間に低血圧が進行する急性低血圧というように時間経過で分類することもあります。急性の低血圧は大量出血、高度脱水、広範火傷、重症感染症、心機能低下などで起こりますが、重症のことが多く、この場合は救急の処置が必要となります。
近年の健康志向の高まりとともに家庭血圧計の普及は目覚ましく、また、公共機関においては血圧計を常備している施設も多くなっています。これらを利用して自身の血圧を把握することは、以前と比べ容易になっています。まず、自己の血圧を知るために血圧測定をしてみましょう。機会を変えて複数回測定し、収縮期血圧100mmhg以下が多いようでしたら、低血圧として対処しましょう。
一般に自覚症状のない本態性低血圧は原則放置してよいといいますが、原因疾患を有する症候性低血圧や起立性低血圧を常に念頭において、多彩な低血圧の症状(以下に主な症状を記載)を自覚したら、一度は医療機関を受診し精密検査を受けることが望まれます。
低血圧の症状
血圧値が低い、絶えず疲れやすい、朝起きるのがつらい、なんとなく身体に力が入らない、頭が重い、めまい・耳鳴りがする、冷や汗をかく、身体がふわふわする、急に立ったら頭から血の気が引いて失神を生じる、動悸がする、食欲がない、腹痛・嘔気・嘔吐など
今後の適切な予防と治療を行なうため、低血圧における鑑別診断は必要不可欠です。低血圧の起こり方の詳しい問診聴取とともに、種々の検査を実施し、特に症候性低血圧については、原疾患の種類によっては生命に重大な結果をもたらすこともありますので、早急に診断し、その治療を行なうことが求められます。
症候性低血圧についてはそれぞれの原疾患の予防となりますので、ここでは本態性低血圧と起立性低血圧の予防について記載します。
両者とも自律神経の調節がうまくはたらかないために起こるということをよく理解してもらい、日常生活で調和のとれた自律神経系の状態が維持されるように生活指導を行ない、実践することが予防につながります。予後良好の疾患ですが、再々症状が現れると不快で、日常生活の質の低下を招きます。以下のような、自身で取り組みやすい予防法から実施してみましょう。
・十分な睡眠をとり、規則正しい生活のリズムをつくる
・偏食・暴飲暴食を避け、規則正しく三食栄養バランスのとれた食事摂取を行なう
・血管内の循環血液量を減らさないために適度な水分をとり、過剰な塩分制限を行なわない
・全身循環の改善に適する運動を無理のない程度に行なうなど
さらに、起立性低血圧においては起立時に急激な起立行動を避け、ゆっくりと立位をとる、他疾患の合併で起立時低血圧を誘発する薬剤を服用中であれば、かかりつけ医と相談して可能なら薬の減量・変更を行なってもらう、起立時の下肢末梢静脈血液のうっ滞(血液が下肢へ集まってたまってしまうこと)を防ぐため弾力ストッキングを装着する、立位時失神の前駆症状があれば、すばやくしゃがんだり・横になったりして回避行動をとることなどが予防となります。
解説:山﨑 純一
鳥取県済生会境港総合病院
循環器内科副院長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。