社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2020.12.09

月経前不快気分障害(PMDD)

premenstrual dysphoric disorder

解説:左右田 裕生 (兵庫県病院 副院長・診療部長・医療安全管理室長)

月経前不快気分障害(PMDD)はこんな病気

月経(生理)が始まる2週間前ごろから心身が不安定でとてもつらい状態を「月経前症候群(PMS)」といいます。その中でも心の不安定さが際立って強く出てしまう場合は「月経前不快気分障害(PMDD)」と診断されます。
PMDDは抑うつ気分、不安・緊張、情緒不安定、怒り・イライラの4症状が中心で、食行動の変化や睡眠障害などの特徴的な症状が月経前に出現することで社会活動や人間関係に支障をきたします。原因や病態についてはまだ完全には明らかにはなっていません。

月経前不快気分障害(PMDD)の症状

症状は次に示す診断基準を参照してください。

月経前不快気分障害(PMDD)の診断

PMDDの診断基準として、アメリカの精神医学会によって作られたものを以下に示します。
A~Fの項目に該当し、BとCの項目(症状)についてはBで1つ以上、Cで1つ以上がそれぞれ当てはまり、BとCを合わせて5つ以上であることが診断の条件となります。
これを参考にしながら、担当の医師が患者さんそれぞれの状態をみて診断を行ないます。

月経前不快気分障害(PMDD)の診断基準(DSM-5)

A ほとんどの月経周期において、月経開始前最終週に少なくとも5つの症状が認められ、月経開始数日以内に軽快し始め、月経修了後の週には最小限になるか消失する。
B 以下の症状のうち、1つまたはそれ以上が存在する。
(1)著しい感情の不安定性(例:気分変動;突然悲しくなる、または涙もろくなる、または拒絶に対する敏感さの亢進)
(2)著しいいらだたしさ、怒り、または対人関係の摩擦の増加
(3)著しい抑うつ気分、絶望感、または自己批判的思考
(4)著しい不安、緊張、および/または“高ぶっている”とか“いらだっている”という感覚
C さらに、以下の症状のうち1つ(またはそれ以上)が存在し、上記基準Bの症状と合わせると、症状は5つ以上になる。
(1)通常の活動(例:仕事、学校、友人、趣味)における興味の減退
(2)集中困難の自覚
(3)倦怠感、易疲労性、または気力の著しい欠如
(4)食欲の著しい変化、過食、または特定の食物への渇望
(5)過眠または不眠
(6)圧倒される、または制御不能という感じ
(7)他の身体症状、例えば、乳房の圧痛または膨脹、関節痛または筋肉痛、“膨らんでいる”感覚、体重増加
D 症状は、臨床的に意味のある苦痛をもたらしたり、仕事、学校、通常の社会活動または他者との関係を妨げたりする(例:社会活動の回避;仕事、学校、または家庭における生産性や能率の低下)。
E この障害は、他の障害、例えばうつ病パニック症、持続性抑うつ障害(気分変調症)、またはパーソナリティ障害の単なる症状の増悪ではない(これらの障害はいずれも併存する可能性はあるが)。
F 基準Aは、2回以上の症状周期にわたり、前方視的に行われる毎日の評価により確認される(注:診断は、この確認に先立ち、暫定的に下されてもよい)。

注:基準A~Cの症状は、先行する1年間のほとんどの月経周期で満たされていなければならない。

出典:産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2017

月経前不快気分障害(PMDD)の治療法

薬を使わない治療
このような病気があるということを知るだけでも症状が和らぐケースも少なくありません。病気の理解と症状が出る時期や症状の強さを認識することが非常に重要になります。
また、ストレスを感じている場合は適度な運動やリラクゼーションを勧めます。有効性に関しての証拠は必ずしも明確に示されてはいませんが、症状が軽い場合には広く行なわれています。

薬を使う治療
1)
症状を抑える治療
症状が軽い場合は対症療法として、情緒不安定に対して精神安定剤、浮腫(ふしゅ)に対して利尿剤、頭痛腹部痛に対して鎮痛剤などが適宜用いられます。

2) 抗うつ薬(SSRI)
症状が中等症以上の場合は抗うつ薬が第一選択となります。連続して投与する方法と月経開始前の2週間のみ投与する方法があります。少量の投薬量で早くから効果が得られます。

3) 経口避妊薬
産婦人科では、頭痛や乳房痛などの体の症状の改善のために経口避妊薬などの低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤を用います。最近では黄体ホルモン薬のドロスピレノンと卵胞ホルモン薬のエチニルエストラジオールからなる新しい低用量ピルが、PMDDの症状を軽くし生活の質も改善するとの報告があり使われています。

4) GnRHアゴニスト
卵巣機能を抑制するため月経はなくなり、最終手段の治療となります。女性ホルモンの分泌がなくなるので、更年期障害(ほてり、発汗、不安イライラ感)や、同年代の人より前倒しに、脂質異常、動脈硬化、骨粗鬆症の病気が起きるリスクがあります。

5) 漢方薬
漢方療法はPMDDに効く可能性があります。体のバランスそのものに働きかけることを期待し、また副作用も少ないので産婦人科診療で用いられることがよくあります。

月経が始まる7~10日前ごろ(長ければ14日前)の期間に起こり、月経終了とともに軽くなるのが基本です。また、基本的に月経の周期は正常で、普段から気分の不安定さや片頭痛などを持っている人の場合でも、月経周期と症状の強弱が明らかに連動しているのが特徴です。
月経が始まる前の心の不安定がとてもつらく、日常生活や社会生活に支障があると感じる場合は早めに産婦人科、心療内科あるいは精神科を受診し、まずは相談してください。

薬の内服で多くの人は症状が楽になっていくとはいえ、月経前に心身が不安定になってしまうのは、ある程度は避けられないことです。
PMDDの症状の悪化にはストレスや生活習慣の影響も大きいので、以下のようなことを意識した日常生活を過ごしてください。

1. 基礎体温を記録し、症状日記をつける
2. 生活リズムを整える 
3. カフェインを控える 
4. 食事のバランスに注意する 
5. 適度な運動をする 
6. 大切な人には伝えておく 
7. 自分で気持ちを落ち着ける方法を身につける

左右田 裕生

左右田 裕生
兵庫県病院
副院長・診療部長・医療安全管理室長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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