社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2022.12.14

全般不安症(GAD)

generalized anxiety disorder

解説:古関 麻衣子 (千葉県済生会習志野病院 精神科)

全般不安症はこんな病気

全般不安症(全般性不安障害)は、不安障害の一種で、強い不安や危機感のために自律神経失調症のような症状(息苦しさ動悸倦怠感めまいなど)が現れます。

全般不安症に似た症状がみられるパニック障害社交不安障害は、苦手な(症状が現れやすい)状況や場面がはっきりしています。これに対し全般不安症は不安を感じる範囲が幅広く、家庭や学校、職場のほか、交友関係、地震、世界情勢など多岐にわたります。

明らかな原因は分かっていませんが、脳の中の不安や恐怖を感じる器官(扁桃体など)の機能異常と考えられています。患者さんの割合は女性にやや多いですが、小児期から壮年期まで多くの世代でみられます。

全般不安症の症状

仕事や学業などさまざまな場面・出来事・活動について、過剰な不安や心配を抱き、そのコントロールが難しい状態が6カ月以上続きます。

不安に伴い下記の症状のうち3つ以上がみられます。

① 落ち着きのなさ、緊張感、または神経の高ぶり
② 疲れやすさ
③ 集中力の低下
④ 怒りっぽさ
⑤ 筋肉の緊張
⑥ 睡眠障害

全般不安症の検査・診断

前述の症状がみられ、その不安や心配、または身体症状による苦痛が大きく、就労や就学、日常生活にも支障をきたす状態であれば、全般不安症と診断されます。
その際、甲状腺疾患などその他の病気による症状ではないことを確認するために、身体疾患の検査や診察が必要となります。
また、自律神経失調症の症状が現れる可能性のある薬剤や、神経系の働きに作用する神経作用物質を使用したかどうか確認することも必要です。

全般不安症の治療法

治療は薬物療法と精神療法を併用することが多いです。

●薬物療法
抗うつ薬として使用される、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、ベンゾジアゼピン系抗不安薬などを使用します。
根本の不安症状に対してはSSRIやSNRIを、身体的な緊張や不眠には即効性のある抗不安薬を使用します。

●精神療法
「認知行動療法」という治療法が有効とされています。
この治療法は、ある出来事に対する自分の極端な思い込みや認知(考え方、受け止め方)、行動の特徴を認識し、修正することで、不安などの感情の軽減を図る治療法です。リラクゼーションなどの効果もあるといわれています。

全般不安症は単なる心配性と思われてしまうケースも多いです。しかし、医学解説の「全般不安症の症状」の項で取り上げた症状が当てはまり、明らかに生活に支障をきたしている場合は、早期に精神科や心療内科を受診して相談することをお勧めします。

全般不安症の発症を予防するためには、日頃から対人関係や家庭、仕事など物事に対して偏った受け止め方をしていないか注意することが大切です。同時に、生活習慣を整えたりストレスを軽減したりするよう努めるとよいでしょう。
また、アルコールやカフェインなどの過度な摂取にも注意が必要です。

参考:アメリカ精神医学会「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」

解説:古関 麻衣子

解説:古関 麻衣子
千葉県済生会習志野病院
精神科


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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