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2019.07.24

ジャンパー膝(膝蓋腱炎) (膝蓋腱炎=しつがいけんえん)

Patellar Tendonitis

解説:堀越 万理子 (湘南平塚病院 リウマチ関節外科部長 兼 リウマチ・関節センター長)

ジャンパー膝はこんな病気

ジャンプやダッシュなどによる膝関節の屈伸動作を、頻繁にかつ長時間にわたって行なうことで起こる障害です。バレーボールやバスケットボールなどジャンプ動作を長時間繰り返したり、サッカーのキック動作やダッシュなどを何度も行なったりすると生じることが多々あります。スポーツを活発に行なうようになる10代に多く発症します。

ジャンパー膝の原因

膝蓋骨(しつがいこつ=膝の皿)下部にある膝蓋靭帯(しつがいじんたい)は、スムーズに膝関節の曲げ伸ばしをするための役割を果たしています。しかし、屈伸動作を繰り返し行なうと、膝蓋靭帯に過度な伸張ストレスがかかり、膝蓋骨の大腿四頭筋腱(太ももの前面にある筋肉と膝蓋骨をつなぐ腱)や膝蓋靭帯に付着する部分に痛みを生じます。

膝蓋靭帯と膝蓋骨がくっついている部分の下から3分の2に沿っての痛みがほとんどですが、そのほかに、大腿四頭筋腱が膝蓋骨上部に付着する部分に痛みが出ることもあります

図:ジャンパー膝が起こりやすい場所図:ジャンパー膝が起こりやすい場所

ジャンパー膝の診断

重症度で下記の4段階に分けられます。

軽症 :スポーツ活動中に痛みを感じますが、活動後は痛みがなく運動に支障はありません。
中等症:スポーツ活動中や活動後も痛みがありますが、運動は支障なく行なえます。
重症 :常に痛みがあり、スポーツ時にはさらに痛みが増すので運動に支障が生じます。
最重症:膝蓋靭帯の部分または完全断裂を生じ、日常生活への支障をきたすので手術適応になります。

早期発見のポイント

ダッシュ、ジャンプ時に、膝蓋骨下部や上部に痛みを感じたら発症を疑うべきです。発症初期では、歩いているときに痛みは出ませんし、運動の継続は可能です。しかし、膝蓋骨から膝蓋靭帯に付着する部分を指などで圧迫すると痛みが出ます。また、腹ばいの状態で膝を曲げると、うずくような痛みのため臀部が上がる〝尻上がり現象〟がみられ、太もも前面の突っ張り感と痛みが出ます。

症状が進むと、炎症部分が腫れ上がって熱っぽさを感じるようになり、その場合はMRIで炎症を認めることが可能です。

予防の基礎知識

運動量が原因の、いわゆる膝の使い過ぎによる膝のスポーツ障害であり、大腿四頭筋の柔軟性不足と筋力以上の負荷が問題になります。運動前のストレッチや基礎運動が予防の基礎です。

●軽症
太もも前面のストレッチと練習後に行なう膝のアイシング(運動後に特定の部位を冷やすこと)を徹底しましょう。スポーツをするときは、サポーター装具をつけると膝への負荷を軽減できます。
●中等症
ジャンプ動作をやめ、膝と股関節を中心とした下肢(股関節から足の指先まで)の運動療法とアイシングを行ないます。痛みが軽減していけば、この方法で3、4週間で痛みがなくなります。痛みが軽減しなければ、スポーツ運動量を相対的に減量すべきです。
●重症
月単位での運動休止が必要となり、下肢の筋肉のバランス改善を目的としたストレッチを行ないます。歩行時に痛みを伴うので、歩くときの姿勢が崩れないように注意する必要があります。重症の状態になる前に気づいて、早めに治療し、慢性化しないように注意しなければいけません。

解説:堀越 万理子

解説:堀越 万理子
湘南平塚病院
リウマチ関節外科部長 兼 リウマチ・関節センター長


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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