済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
新型コロナウイルスの感染が広がった2020年3月後半、通いで行なうリハビリ利用を自粛したいとの申し出が、当施設に寄せられるようになりました。
高齢者の生活範囲が狭くなり動かなくなる「不活性」は、感染予防ができたとしても、それ以降の生活に大きな影響を及ぼします。「現状よりよくなるリハビリ」が難しい場合、家庭で「簡単に、安全にできる体操」を提案すれば、気軽に身体を動かすことができるのではないか。心身の機能低下を防ぐために新たな生活習慣として組み入れてもらいたい、という思いから「コロなんて体操」を考案したのです。
内容は、とにかく安全に、ゆっくり動いて、少しでもやった気分や満足感を得られるものに絞り、利用者さん向けにDVDを配布。その後全国に緊急事態宣言が発令されたことから、少しでも多くの方々の手助けになれば、と願いを込めてYouTubeに「希望の園」チャンネルを開設し、一般向けにも発信しました。
介護現場の視点から生まれた体操ですが、高齢者や要介護者に限らず、外出控えやテレワークなどで運動不足になりがちな若年層や中年層にもおすすめです。家庭でも職場でも、その場でできる体操なので、ぜひ皆さんも日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?
《体操の基本》
・呼吸は自然に(数を数えると、呼吸が無意識にできる効果あり)
・無理はしない。特に動き出しはゆっくりと
・回数にこだわらない。片方だけ、できる分だけでもいい
肩をつまんで肩甲骨ほぐし
肩甲骨の動きを滑らかにして、血流の改善、肩こりや肩の痛みを解きほぐそう①肩をつまむ。前かがみにならないように、胸を張る
②肩を中心に、前から後ろに輪をかく。前から後ろを10回、後ろから前で計20回、ゆっくり回す
Point
・最初は小さい円から、徐々に大きく。動きに合わせて肩甲骨が背中の上を動くようになればOK
手を組んで伸び上がる
肩から腕、上半身の筋肉や関節を伸ばし、血液の循環を良くしましょう。胸を大きく開くと、肺により多くの酸素を取り込むことができます
①②手を前に組んでそのままぐっと前に伸ばす。背筋を伸ばしてゆっくり上に上げる。いつもより2~3cm遠くまで、手を伸ばすように意識する
③身体をゆらゆらと左右に4~5回ゆする。肩が痛い場合などは、胸を張って背筋を伸ばす(頭を上から引き上げられるイメージ)だけでも効果あり
Point
・おへそを前に突き出すイメージで、骨盤を起こす
・素早く動くと、筋肉だけでなく心臓や肺にも負担がかかるので、必ずゆっくり
小指から指折り
身体と脳を一緒に使って、できなくても、やりにくくても、しようとすることが脳を活性化させます
①小指から数を数えながら、1本ずつ指を折り、1本ずつ開く
(1回目はゆっくり、2回目は早く)
②簡単にできるようなったら、左右別々の指折りにトライ!
Point
・小指から中指にかけての動きは、「伸ばす指」と「曲げている指」を明確に(できなくても、やろうとする意識が大事)
左右交互に膝を伸ばす体操
太ももや膝から足首までの前の筋肉(大腿四頭筋、下腿三頭筋など)が鍛えられ、筋力がアップ。転倒を予防する力がつきます
①股関節、膝、足の関節が、一直線になるように片方の足を上げ、伸ばします。膝とつま先は斜めにならないように、真上に向けて
②呼吸しながらゆっくり上げ下ろし。左右交互に10回ぐらい
Point
・上半身はできるだけ後ろに倒れないように
・膝の痛みがある方は、無理に膝を伸ばさなくてもOK
ももの内側を鍛える
太ももの内側の筋肉と膀胱を支えている骨盤の筋肉(骨盤底筋群)が鍛えられます。呼吸も合わせれば、尿漏れ予防にも効果あり
①骨盤を立てる。握りこぶしを両膝の間に入れ、脚のつけ根から寄せるように膝の内側に力を入れてこぶしを押す
②休憩しながら、力を入れたりゆるめたりを4~5回繰り返す
Point
・力を入れるときに、息を吐きながら身体の内側に肛門を引き込むようにすると、尿道や肛門周辺の括約筋(かつやくきん)に刺激が入り、尿漏れ予防にもなる
お尻を浮かせる
股関節から太もも、膝に至る筋肉全体に刺激を与えてバランスをとることで、歩行や立ち上がりの不安定さを改善します。座ってできるスクワットです
①腰を前に少しずらし、足を手前に引いて座る。膝とつま先は正面を向ける
②徐々にお尻を浮かせ、前に行き過ぎないように注意を。完全には立ち上がらず、途中で止まり、ゆっくり座る。4~5カウント数えながら行なう
Point
・不安な方は、前に台などを置いて手をつきながら行なってください
動画でチェック!
上記以外にもさまざまな体操を紹介しています
コロなんて体操 第一~肩から手の体操~
コロなんて体操 第二~座って行う足の体操~
コロなんて体操 第三~棒体操~
コロなんて体操 第四~立って行う体操~
■高齢者自身は?
一日中動かずに家に引きこもっていると、徐々に日中のリズムが乱れてきます。気分転換する機会が減ると、不安や意欲の低下が強まることもあります。高齢者のこのような状態は「フレイル」と呼ばれ、身体機能をさらに衰えさせ、もともと健全だった機能も老化が進んできます。身体の衰えと連動して前向きな気持ちが失われ、精神的な機能も低下します。片方の機能低下が、もう一方の機能低下を引き起こしてしまうのです。
以上のことから、まずは生活リズムを崩さないこと、決まった時間に起き、太陽の光を浴びることが重要です。またきちんと食事(栄養)をとり、少しでも身体を動かします。音楽や趣味活動、窓を開けて外の景色の変化を探したりするなど、すっきりしない気持ちを「リセット」することを意識づけます。
■高齢者のいる家庭、遠隔地の家族は?
「なんとなく以前と違うような気がする」といった些細な変化を見逃さず、より深刻な状態に陥る前に予防します。一緒の時間を過ごし、身体面や会話の内容、周囲への反応や関心の度合いをチェック。変化がみられた場合には、早急に主治医や支援専門員に相談してください。これは同居していない家族も同様です。電話をかけて声を聞く、話に耳を傾けるなど、常に気にかけるよう配慮しましょう。
また何か役割を持って、家族に頼りにされる立場になってもらうことも重要です。自分のためには行なう意欲がなくても、家族や親しい人のためにならできることがあるので、ほんの小さなことでも役割分担をして、感謝の言葉をかけてください。そうすることで前向きな気持ちが芽生え、認知症や精神面の機能低下を防ぐことにもつながります。
※イラストや写真の表現について
実際の介護現場ではマスク着用の上、適切な感染予防対策を行なっています。
1993年鳥取大学農学部農林総合科学科卒業、1996年京都大学医療技術短期大学部作業療法学科卒業。一般病院で療養病棟・回復期病棟・外来にて作業療法士として勤務した後、
済生会今治老人保健施設 希望の園に入職。2018年よりリハビリテーション係長、2019年より通所リハビリテーション責任者を兼務。
「当施設では、標準予防対策に加え、それぞれのケースに応じた対応をしながら、新型コロナウイルス発生以前と同じサービスを、質・量ともに変えることなく提供しています。我々福祉の現場は、近い将来利用者の皆様が『ハレの日』を迎えられるよう、変わらない日常である『ケの日』を支えていきたいと思っています」
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。