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2022.02.02
高浸透圧高血糖症候群は糖尿病の急性合併症の一つで、高血糖に関連する病態です。2型糖尿病の高齢者に多く、同じく糖尿病の急性合併症である糖尿病ケトアシドーシスに比べてインスリンの不足やケトン体(脂肪の代謝の過程で発生する物質)の増加は大きくありませんが、著しい高血糖(多くの場合800mg/dL以上、ひどい場合には2000mg/dL近くになることも)とそれに伴う高度の脱水状態がみられます。また、死亡率が10〜20%と高いという特徴があります。
原因としては、肺炎や尿路感染症などの感染症をきっかけに発症する場合や、脳梗塞や心筋梗塞、急性膵炎など他の病気をきっかけとして発症する場合、ステロイド薬や利尿薬などの薬剤や高カロリーの点滴を使用したことで発症する場合などがあります。
糖尿病は「自覚症状に乏しい」「自分では気づきにくい」「長い期間放置していると合併症が怖い」といった比較的ゆったりとした経過をたどる印象があります。しかし、高浸透圧高血糖症候群は糖尿病ケトアシドーシスと同様に緊急性が高く、速やかに対応しなければ命に関わる危険があるため注意が必要です。
特徴的な症状はなく、高血糖と脱水に伴う倦怠感や口の渇きを感じることもありますが、高齢者では症状に気づかないことも多いです。
血液検査で高血糖と脱水が認められ、アシドーシス(血液が酸性の状態)ではないことが分かれば、高浸透圧高血糖症候群と診断されます。
糖尿病の患者さんが風邪などをひいて体調不良の際には血糖値が高くなりやすいため特に注意が必要です。高齢者は自身で高血糖や口渇感などに気がつきにくいことから、体調が悪いときにはいつもよりこまめに血糖測定を行なうことが早期発見につながります。
また、高齢者は高浸透圧高血糖症候群の原因にもなる肺炎や尿路感染症などの感染症にもなりやすいです。日頃から体調管理に気をつけて、体温測定や血圧測定などを定期的に行ない体調の変化に気を配ることが大切です。体調不良が続くときには早めにかかりつけ医を受診するようにしましょう。
・自己判断で治療を中止しない
・高齢者は体調の変化に気づきにくいため、普段から血糖や体温・血圧などをこまめに測る
・清涼飲料水などの飲み過ぎによる高血糖に注意する
高浸透圧高血糖症候群は高血糖が原因となるため、インスリンや飲み薬などの糖尿病の治療を自己判断で中止しないことが大切です。食事をとることができないときも、インスリンや飲み薬の継続・中止の判断については必ずかかりつけ医に相談し、勝手に中止しないようにしましょう。
自己血糖測定を行なっている患者さんは、血糖値が普段と比べて高くなっていないか、かかりつけ医の指示通りに定期的にチェックすることで著しい高血糖を予防することができます。普段血糖測定をしていない人も、飲みやすい清涼飲料水やゼリーなどをとり過ぎて高血糖にならないように注意しましょう。
解説:迫 康博
飯塚嘉穂病院
院長・糖尿病センター長
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