社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2024.08.07

慢性膵炎

chronic pancreatitis

解説:中村 由紀子 (山形済生病院 消化器内科)

慢性膵炎はこんな病気

慢性膵炎(すいえん)とは、膵炎が何度も繰り返されて長期間続いている状態です。
膵臓は胃の背中側にある臓器で、消化酵素を含む膵液や、インスリンなど血糖値を調節するホルモンを分泌しています。膵液が過剰に分泌されて膵管内圧が高まると、膵液は膵臓自体を消化し始め、膵炎を発症します。膵炎が長期間続くと慢性膵炎になり、膵液が貯留した嚢胞のうほう(膵嚢胞)や石(膵石すいせき)ができる人もいます。また、膵炎によって膵臓の細胞が壊れて硬くなると、糖尿病膵臓がんを引き起こします。
最も多い原因はアルコールの飲み過ぎですが、原因を特定できない場合もあります。

慢性膵炎の症状

早期の段階では自覚症状が現れにくく、診断されたときには既に進行した状態であることが少なくありません。
慢性膵炎の症状は、進行するにつれて変化します。よくみられるのは上腹部痛と背部痛(みぞおちから背中に通しての痛み)です。アルコールや脂っこいものを食べた数時間後に現れることが多く、吐き気や嘔吐を伴います。慢性膵炎が進行し、膵臓の機能が著しく低下すると痛みは軽くなり、消化不良による下痢や脂肪便、体重減少、糖尿病による症状がみられるようになります。

慢性膵炎の検査・診断

1)血液・尿検査
血中または尿中膵酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)値の異常が診断の手がかりとなります。膵臓の機能が保たれている間は膵酵素は上昇しますが、進行して膵臓が硬くなると膵酵素は低下します。低栄養や糖尿病の有無についても確認します。

2)画像検査
腹部超音波やCT・MRIなどの各種画像検査で、慢性膵炎かどうか、膵石や膵嚢胞すいのうほう膵臓がんの有無について診断します。早期慢性膵炎の診断には、内視鏡の先端にエコーが付いている「超音波内視鏡検査」が膵臓に近い胃から観察ができるため適しています。慢性膵炎の疑いがある場合は、専門医のいる病院の受診をお勧めします。

慢性膵炎の治療法

最も大切なのは、原因を除くことです。 大多数の方は飲酒が原因なので、まず禁酒をすることが必須です。たばこは慢性膵炎を進行させることがわかっているので、禁煙も重要です。
大変なのは頑固な痛みです。鎮痛剤を常用して、次第に効きが悪くなる場合があります。そうなる前に、腹痛の原因になる膵石があれば、内視鏡治療や衝撃波により体内の結石を破砕する体外衝撃波結石破砕術などの手術を行ないます。慢性膵炎が原因で糖尿病(膵性糖尿病)になるとインスリン治療が必要になることが多いです。

慢性膵炎は早期の段階で治療を行なえば、進行を阻止し、膵臓がんのリスクを下げることが期待できます。慢性膵炎が心配な方は消化器内科を受診してください。

飲酒と喫煙は慢性膵炎を進行させることがわかっています。禁酒、禁煙が重要です。

解説:中村 由紀子

解説:中村 由紀子
山形済生病院
消化器内科


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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