2026.06.01

暑い季節も要注意! 知って防ぐ、子どもの夏の病気

実は、暑い夏の季節こそ手足口病やプール熱といった感染症をはじめ、気温上昇による熱中症など、子どもの体調管理に気をつけたい季節。近年では、RS ウイルスによる感染症が夏に流行し、流行時期にも変化が見られるなど小児科の現場では新たな傾向も指摘されています。今回は夏の子どもの健康管理について、横浜市南部病院・小児科主任部長の田中文子先生に解説していただきました。

子どもの“夏風邪”とは?

夏に流行しやすい代表的なウイルスが引き起こす病気

夏は、大型連休などで人と人が接触する機会が増えることや、温度・湿度の関係などが働いて感染症の流行が拡大しやすい季節です。この時期に子どもたちの間で流行する代表的なウイルスには、「エンテロウイルス」と「アデノウイルス」があります。エンテロウイルスは手足口病ヘルパンギーナの原因となり、アデノウイルスは咽頭結膜熱(プール熱)流行性角結膜炎の原因となるウイルスです。これらの感染症が、夏に子どもがよくかかる“夏風邪”とよばれるものです。

病名 かかりやすい年齢 原因となるウイルス 症状
手足口病 2〜3歳 エンテロウイルス

・軽度の発熱(発熱を認めないことも多い)
・咽頭痛
・手のひら、足、膝、肘、おしり、口の粘膜などに2~5mmの小さな水疱
※コクサッキーウイルスA6による感染症は水疱径が大きく全身に広がるため水ぼうそうと間違いやすいこともある

ヘルパンギーナ 0〜4歳 エンテロウイルス ・発熱(突然の発熱)
・咽頭痛
・上あごの奥に周囲が赤くなった1~数mmの小さな水疱
咽頭結膜熱(プール熱) 1〜5歳 アデノウイルス ・発熱
・咽頭痛
・扁桃腺の腫れ
・目やに
流行性角結膜炎 1〜5歳
※成人も含め、幅広い年齢で発症
アデノウイルス ・結膜の浮腫(むくみ)、充血
・眼瞼(まぶた)の浮腫
・(サラサラとした)目やに
・涙が出てくる

子どもの感染症はどこから広がる?

感染した子どもの唾液、痰、鼻水、便などに含まれるウイルスが、くしゃみなどの飛沫や直接の接触、もしくは手指などを介して、ウイルスが口や喉の粘膜に運ばれることで感染が広がります。

エンテロウイルス感染症は、7~8月に流行のピークを迎え、手足口病とヘルパンギーナは主に夏の間に発症します。一方で、アデノウイルスは1年を通して感染する病気ですが、夏には患者が増加することがわかっています。さまざまなタイプがあり、咽頭結膜熱になるものもあれば、眼が赤くなって目やにが出るだけのもの、さらには胃腸症状として現れるものもあります。

このように、同じウイルスの中にもたくさんの型があり、現れる症状が違ったり、地域ごとに流行する型が違ったりもします。例えば、新型コロナウイルス感染症の流行後、さまざまな感染症の不規則な流行が確認されています。2024年には手足口病の夏と秋の二峰性の流行などを認めています。

夏風邪以外で注意したい子どもの病気

RSウイルスは「夏にかかりやすい」は本当?

エンテロウイルスとアデノウイルス以外にも、夏に流行する感染症があります。乳幼児が多くかかるRSウイルス感染症は、もともとは冬に多く見られていましたが、2015年以降、夏の時期にピークを迎えるようになってきています。通常、1歳から2歳までにほぼ全員が発症するといわれている感染症ですが、感染対策が強化されていた新型コロナウイルスの流行期の間に感染者数が減少し、これまで一度もかかったことのない乳幼児が増えた結果、2021年に大流行しました。

実はこのRSウイルス感染症は、多くの子どもがほぼ毎年かかる病気とされており、子どもが成長するにしたがって「鼻水が出るだけ」といった軽度の症状のみになっていきます。近年の傾向を見て、夏に感染ピークを迎えるといっても、子どもに免疫があるかどうかで症状や流行の時期に変化が現れるので通年で注意が必要です。そのほかにも、この数年で溶連菌の重症化事例が出てくるなど、エンテロウイルスやアデノウイルス以外の感染症にも注意が必要です。

気温上昇でリスク増、「子どもの熱中症」

感染症と並び、夏に子どもたちが体調を崩す主な原因に熱中症があります。子どもは体内を占める水分の割合が大人よりも高いため、高温の環境にいると脱水症状に陥りやすいという特徴があります。気温は温暖化にともなって年々上昇しており、熱中症は常に起こりうると意識しておくことが大切です。

未就学児くらいの子どもは暑さや喉の渇きを感じていても、遊びに夢中になっていると、遊びを優先してしまうため、周りの大人がこまめに水分補給を促すことが重要です。家に帰ってきたあと、頭痛や吐き気を訴えたり、筋肉がつっている、体温が上がったままになっているという場合には、体を冷やし水分補給を行ないながら、必要に応じて医療機関への相談を検討しましょう。

また、乳児は喉の渇きを感じていても、言葉にする・行動に移すことができません。不機嫌だったり、元気がなくなったりといった日常の様子から、大人が気付く必要があります。特に移動時に使うベビーカーは地面に近いため、周囲の熱の影響を受けやすく気温以上に暑くなりやすいといわれています。雨のときのようにビニールで覆うのではなく、風通しをよくしながら日差しを避けるなど、工夫するようにしてみましょう。

「子どもの感染症」、自宅看護で気をつけたいこと

予防の知識をアップデートしよう

エンテロウイルス・アデノウイルスが引き起こす、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎については、どの疾患も命に関わることは少ないといわれています。しかし、特効薬はなく、症状に応じた対処療法で治療していくことになります。

例えば、新型コロナウイルス流行期を経て、アルコール消毒が一般的になりましたが、アデノウイルスや、通年見られるノロウイルスロタウイルスにはあまり効果がありません。手指衛生のためには、石けんをつけ、流水でしっかりと手洗いすることが感染防止につながります。

食事について、自宅での療養で食欲がなければ何日かは固形物を食べられなくても構いませんが、水分、塩分、糖分の3つを欠かさず摂取することが大切です。ヘルパンギーナや手足口病では喉が痛くなるため、水分を取るときにスポーツドリンクや柑橘系のジュースは沁みて痛いことがあります。白湯やお茶、乳児であれば哺乳回数を増やすなどして、水分をしっかり摂るようにしましょう。下痢がある場合は、りんごジュースなど比較的飲みやすいものを少量ずつ摂るのも一つの方法です。塩分と糖分を食事から摂れない場合は、ゼリー飲料であれば摂取できることが多いようです。お味噌汁の上澄みをすくって飲ませるのもよい方法です。

いつものおむつ交換に要注意!

手足口病やヘルパンギーナの原因となるエンテロウイルスは腸管にいるのが好きなウイルスで、下痢をしなくなっても1〜2週間は便にウイルスが潜んでいる可能性があります。おむつをさわった後は、汚れていないと思っても必ず手洗いをしたり、吐瀉物を処理したりするときはマスクをつけて空気中に舞うウイルスを吸い込まないように気をつけてください。

また、抱っこをすると服にウイルスが付着することもありますから、ビニールエプロンをするのもよいでしょう。きょうだいのいるご家庭や保育園などでは、子どもたち同士はくっついて遊ぶ場面もあり、無意識に顔などをさわってしまうため、症状がなくなっていても油断せず目を配ってあげてください。

医療にかかるタイミングは?

本人がぐったりしている、脱水が進んで目元がくぼんでいる、普段と様子が違うと感じたら、早めに医療機関へ相談すると安心です。

夜間に症状が悪化することもありますが、発熱して40度あったとしても、水分を取って眠れているようであれば、慌てず自宅で様子を見るという選択肢もあります。ただし、3ヵ月未満の乳児であれば、深夜であっても一度医療機関に相談してみることをおすすめしています。

「連続感染」を避けるには予防接種も有効

感染症が流行している時期には、異なる感染症に次々とかかってしまうこともめずらしくありません。エンテロウイルスやアデノウイルスが引き起こす夏風邪には予防接種がありませんが、インフルエンザなどワクチンがあるものは、接種時期などについてかかりつけ医に相談してみましょう。

夏の間は、高温により脱水状態になりやすく、熱が体にこもるとだるさや免疫力の低下にもつながります。マスクの着用も予防にはなりますが、暑い時期は熱中症の心配もあるので、病院や自分自身が風邪を引いているときを除いて、子どもの場合は状況に応じて無理のない範囲で着用を考えましょう。睡眠を十分に取り、日頃から体力を養っておくことも大切です。

解説:田中文子先生

解説:田中文子先生
横浜市南部病院
小児科主任部長

※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。

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