2026年に入り、日本で感染が急増している「はしか(麻しん)」。ワクチン接種の普及によって、近年では発生数が少なくなっていましたが、なぜ今、感染者が増えているのでしょうか。感染力の強さや重症化リスクなど、知っておきたいはしかの基本情報と、自分や周りの人が感染しないための予防方法について、鹿児島病院名誉院長の久保園 高明先生に分かりやすく教えていただきます。
なぜ今、はしかが流行しているの?
●WHOから「排除認定」を受けた日本で再流行
はしかは乳幼児がかかりやすい病気でしたが、日本では1966年に予防接種用のワクチンができて以降、発生数は大きく減少していました。もともと国内にある麻しんウイルス(土着株)による感染は、2010年頃にはほとんど見られなくなり、2015年には、WHOから「排除認定」を受けています。この認定は、土着株による感染伝播が見られない状態が長期間続いていることを証明するもので、日本では感染の心配がほとんどないといってよい状態でした。
ところが、厚生労働省の発表によると、2026年1月から3月29日までに確認された国内のはしか発生数は197例で、すでに2020年以降で最多となっています。
●海外で感染した人の入国が流行のきっかけに
日本での流行の背景には、世界的にはしかの感染者数が激しく増えている状況があります。原因を特定することは難しいですが、新型コロナウイルス感染症の流行によってはしかのワクチン接種が滞った時期があることや、ヨーロッパやアジアなどの多くの国で接種率が下がっていることが考えられます。そのような状況の中、海外ではしかに感染した人の入国をきっかけに、日本でも感染が拡大しているといえます。学校や施設など、集団単位での感染も多いようです。
●新型コロナやインフルエンザの数倍! 麻しんウイルスの感染力
はしかは感染力が非常に強い病気です。飛沫や接触による感染だけでなく、空気中にただようウイルスからも感染が広がってしまいます。1人の感染者が、免疫のない人に平均何人うつしてしまうのかを表す指標である「基本再生産数」で比較した場合、インフルエンザは1〜2、新型コロナは2〜3ですが、はしかは12〜18と言われています。他の感染症と比べても、感染力が強いことが分かります。

2回のワクチン接種で安心できる予防を
●空気感染を食い止めるのはワクチン接種
はしかに対して最も有効な予防方法は、ワクチン接種です。コロナ禍でも話題になりましたが、一人ひとりが抗体を保有することで集団全体の感染を防ぐ“集団免疫”をつくるためには、95%の人が2回のワクチン接種を受ける必要があります。マスクや手洗いだけでは十分な予防は難しいとされていますが、ワクチンを2回接種していれば、感染しても発症しないことが多く、もし発症したとしても軽症で済みます。
●接種歴は母子手帳で確認しよう
2000年4月2日以降に生まれた人は、原則1歳のときに1回目、5歳以上7歳未満のときに2回目の麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)接種を受けています。しかし、定期接種の制度が完全に整備されるまでに空白期間があり、特に1990年4月1日以前に生まれた人は、接種が1回のみの場合も多いことが考えられます。
自分が何回接種を受けているか知るためには、まず母子手帳にある接種歴の記録を確認してください。また、病院で採血をして抗体検査をすることもできますが、検査の結果が出るまでには数日かかってしまいます。現在のようにすでに流行期といえる状況であれば、接種が0回もしくは1回かもしれないという方には追加接種をおすすめします。仮に3回目の接種であっても大きな問題となることは通常少ないとされていますが、不安がある場合や基礎疾患がある場合は医療機関に相談してください。

●妊娠前・海外渡航前には特にワクチン接種を!
はしかのワクチン接種は、多くの医療機関で受けることができます。かかりつけの病院などに事前に電話をして、すぐに接種を受けられるか確認してから受診しましょう。
はしかの感染と予防に特に注意してほしいのが、妊娠中、および妊娠を考えている人です。妊娠中にはしかに感染すると、流産や早産を引き起こす恐れがありますが、妊娠中は接種を受けることができません。そのため、妊娠を考えている人は早めに接種を受けると安心でしょう。なお、胎児への影響を避けるため、接種後は2カ月程度の避妊期間が必要です。すでに妊娠していてワクチンを2回接種できていない人は、なるべく人混みを避け、同居している家族がワクチンを接種するなどの対策を行なってください。
また、これから海外に行く人には、渡航前に接種を受けることを強くおすすめします。
はしかを見極める特徴と重症化のキケン
●高熱、口の中の白い斑点、赤い発疹がポイント
はしかは、感染してから症状が出るまでの潜伏期間が11日前後と長く、症状が出る前に人にうつしてしまう恐れが高い病気です。
始めの3日間ほどは、咳、鼻づまり、38度前後の発熱など風邪とよく似た症状が現れます。結膜炎が起こって、目が赤く充血することが特徴的です。熱が一度下がり始めた頃、はしか特有の“コプリック斑”が口の中に現れます。奥歯のあたりの頬の粘膜に白い斑点が出ていれば、ほぼはしかであると考えられます。
さらにその後、再度高熱が出ると同時に、全身に赤い発疹が出現し、顔から胴体、手足へと、半日ほどで広がります。はしかの場合は、発疹が出た後も39〜40度ほどの高熱が続きます。発疹は徐々に茶色くなりますが、熱が下がってもしばらくは色が残ります。

●命に関わる重症化と“免疫低下”に注意
はしかは重症化すると、肺炎、脳炎、中耳炎などを引き起こす場合があります。子どもや、持病、妊娠などによって免疫の弱い状態の人、また20~30代と若い世代でも抗体がない人は、特に気をつける必要があります。
脳炎は、1000人に1人程度の割合で発症するといわれており、その中には症状が悪化して死亡まで至ってしまう例もあります。はしかにかかって治った数年後に、はしかが原因で亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を突然発症することもあるといわれています。
また、一度はしかにかかるとしばらくの間、身体の中にあったほかの免疫機能が低下してしまうのも、はしかが恐れられている理由のひとつです。しっかりとワクチン接種を受けて、感染しても軽症で治るように対策しておくことが大切です。
●はしかが疑われる場合、まずは医療機関に連絡を
高熱が出ていて、結膜炎や口内のコプリック斑がある場合ははしかが疑われます。かかりつけ医など医療機関に必ず事前に電話をした後、指定された受診時間に発熱外来などにかかりましょう。
「はしかはこわい病気」と言われるのは、感染力が非常に高く、大人や若い世代でも重症化する恐れがあることが理由です。はしかのワクチンは、2回の接種により麻しんの発症予防効果が期待され、国内外で広く使用されています。副反応として発熱や発疹などがみられることがありますが、多くは一時的です。まずは自分や家族の接種歴を確認するところから、はしかの予防を始めてみてください。
解説:久保園 高明先生
鹿児島病院
名誉院長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。
※診断・治療を必要とする方は最寄りの医療機関やかかりつけ医にご相談ください。
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