済生春秋 saiseishunju
2026.08.06

第161回 ストレスとの付き合い

 ストレスに悩まされることが多いためか、ついついストレスについて書きたくなる。
 自分の人生は、ストレスの連続である。強弱の違いはあるが、いつも何かのストレスを感じてきた。

 これがストレスだと実感したのは、高校2年の時だ。
 高校2年生の秋の暮れ、担任のG先生が人気のない小部屋で「最近何かあったのか」と問いかけた。元気がなく学校の成績も下り坂だった私を心配したのだろう。
 「特に理由はありませんけど」としか答えられなかった。
 当時、家業は大きく傾き始めた。イライラした父は、母に辛く当たり、家の中が暗くなり、家にいるのが嫌だった。
 私が席を立つときに、G先生は「頭に禿げができているな」と何気なく言った。その時初めて円形脱毛症ができていると知った。
 家の鏡で見ると、くっきりと10円玉程度の円形ができていた。しかし、「命にかかわることでもないさ」と放置した。

 円形脱毛症は、ストレスが原因だと知ったのは、ずっと後になってからだ。あんな強烈なストレス状態にあったのだから、円形脱毛症の一つや二つできてもおかしくない。
 当時の私の生活態度は、体裁に無頓着だったので、円形脱毛症も気にならなかった。これが最良の治療だった。数カ月後鏡を見たら、消えていた。家の荒れた状態に諦め始めたこともあったのだろうか。

 ストレスは、社会に出てからは日常的に経験する。ストレスを感じない仕事も少ない。ストレスは、上手に付き合えば自分の成長になるし、健康に影響を残さない。
 中には、手強いストレスもあった。理由も分からない突然の左遷、手強い団体との債権回収交渉、局長職の解任運動、国会議員との長期に及ぶ確執などは、身体的精神的にも摩耗したが、いずれも決して逃げたりはしなかった。
 こんなストレスさえも今振り返ると、私の成長の糧になっている。
 一番良いストレスとの私の付き合い方は、ストレスの原因に対して逃げないで果敢に解決のために努力することだと経験的に思っている。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。

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