社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)
2020.05.28

元気に笑って健康に 糖尿病治療と笑いの効果

笑うことは健康によいといわれますが、実際に体の中ではどういったことが起こっているのでしょうか。自身も笑いヨガリーダーであり、糖尿病教室や市民講座などで笑いと健康について講演を行なっている西条病院・内科部長(糖尿病専門医)の金子由梨先生に、医学的観点での笑いの効果と糖尿病治療で期待できることを教えてもらいました。

笑うと健康になる、なんて言いますが、どうしてって聞かれるとなかなか返答に困ってしまうもんです。
そこで、笑いにどんな作用があるのかって話を一席うかがいます。

笑いのさまざまな作用

血行を促進
笑う動作によって体内に酸素がたくさん取り込まれるため、全身の血のめぐりがよくなって新陳代謝も活発に。

筋力アップ
笑うと腹筋、横隔膜、肋間筋、顔の表情筋などをよく動かすので、筋力を鍛えることにもなります。

脳の働きが活性化
笑うと脳の血流が増加し、海馬(記憶をつかさどる)や大脳新皮質(意志や理性をつかさどる)などの働きが活性化。自律神経のバランスが整い、気分が安定する効果も。

高血圧の改善・予防
笑いによる腹式呼吸で、血管を拡張して血圧を下げる効果のある「プロスタグランジンI2」が分泌。糖尿病の合併症予防にもつながります。

免疫力が向上
笑うと脳の情報伝達物質「神経ペプチド」の生産が促進され、体内の免疫システムの先陣を担う「NK(ナチュラルキラー)細胞」を活性化します。

痛みが軽減
関節リウマチ患者さんに落語を聴いてもらったところ、「ストレスホルモン」と呼ばれるコルチゾール、炎症を誘発し悪化させるインターロイキン6の数値が低下したという研究があります。

幸福感が高まる
笑うと鎮静作用があるエンドルフィン、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニン、意欲を高めるドーパミンといった脳内ホルモンが分泌されます。

笑いは糖尿病にも効果あり?

いやはや、たかが笑いと甘く考えられませんね。
甘い、と言えばあたくし甘味には目がないのですが、実は血糖値が気になっておりまして。笑うことで糖尿病も何とかならないものですかね。

●食後の血糖値の上昇を抑える

笑いは血糖値にどのような影響を及ぼすかについて調べた研究があります。糖尿病患者さんを対象に、昼食後に糖尿病の講義を聴講してもらった場合と、漫才を鑑賞して大笑いしてもらった場合とで、昼食前と食後2時間の血糖値を測定して比較しました。
その結果、講義聴講後の食後血糖値は平均122mg/dL上昇しましたが、漫才鑑賞後では平均77mg/dLに抑えられていました。
つまり、漫才で笑うことにより、平均46mg/dLも食後血糖値の上昇が抑えられたということです。

●ホルモンバランスを正常化

笑うと心や体を落ち着いた状態にする副交換神経が働き、ホルモンバランスが正常化し、血糖値を上げる作用があるコルチゾールの分泌が低下します。血糖値を下げるインスリンの作用とバランスが取れることで、血糖コントロールがよい状態になると考えられています。

●インスリンの効きやすさを高める

笑いは脂肪細胞からの善玉物質「アディポネクチン」の分泌を促します。アディポネクチンには悪玉のLDLコレステロールを抑制し、傷ついた血管を修復して動脈硬化を防ぎ、インスリンの効きやすさを高める作用があります。

●合併症の進行を抑制

血中プロレニン濃度は、糖尿病の合併症(網膜症、腎症、神経障害)の発症につながる血管病変の指標の一つです。糖尿病患者さんに漫才を鑑賞して大笑いしてもらった前後で血中プロレニン濃度を測定したところ、漫才鑑賞後は腎症の有無にかかわらず正常値まで低下していました。このことから、笑いが糖尿病合併症の進行の抑制に有効であることが示されました。
また、笑うと腹式呼吸で肺を大きく広げるため、その刺激でプロスタグランジンI2が分泌されます。この物質は血圧を下げたり、血小板の凝集を抑えて動脈硬化を予防したり、血管を収縮させるホルモンを抑えたりします。これは糖尿病の合併症である脳梗塞心筋梗塞の予防につながります。

笑うことで治療の効果もアップ

糖尿病の治療にも笑いを取り入れることでさまざまな効果が期待できるって話だそうで。
どんなことがあるんでしょうね。「期待」だけに「ききたい」ものですね。

●エネルギー消費で運動療法に一役

笑うとエネルギーを消費することから、運動療法としても有効です。膝が痛くて歩けないなど、さまざまな理由で運動ができない人でも、寝ながら笑うことでも効果が期待できます。

●自己管理中心の治療の助けに

糖尿病の治療は、食事や運動、薬物療法など長期にわたる自己管理を伴うため、メンタルヘルスの問題を抱えやすいです。ストレスの増加は過食の問題や、前向きに治療に取り組む気持ちの低下につながります。笑うことはストレスを解消させ、自己管理をしやすくします。

今こそ、笑うことを実践しよう

糖尿病患者さんは新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいといわれており、不安の声をよくお聞きします。日常から「笑い」を意識することで、血糖値を下げ、免疫力が高まり重症化予防が期待できます。

実は、作り笑いでも脳が楽しいと勘違いして、おかしくて笑ったのと同じ効果があることが実証されています。意識して口角を上げるなどするだけでも十分効果があります。
ミラーニューロンは他人の行動を見て、自分も同じ行動を取っているかのように、鏡のような反応をする神経細胞です。不機嫌な人を見てイライラしてしまうのも、ミラーニューロンの働きによるものです。 逆に笑顔の人を見ると、ついこちらも笑顔になります。皆さんも、ぜひ周囲に笑顔を伝染させてください。

まさに「笑う門には福来る」ですね。
実はあたしくの話も心と体に効くって評判でしてね。よく言われるんですよ。お前さんの話は、「ワッハッハ」と大笑いできない。「クスリ」となるだけだって。
 
……お後がよろしいようで。

笑いの量を確保する方法の一つとして、笑いヨガ(ラフターヨガ)をご紹介します。笑いの体操とヨガの呼吸法を組み合わせており、体操として笑うことで、笑いの健康効果を得ることができるというものです。興味のある人はぜひ「初めての笑いヨガ 基本編」をご覧ください。
状況が何一つ変わっていなくても、笑うという行動で気分がよくなることを実感すると、嫌な気持ちも自分でそれを選んでいるのだということに気付かされます。
「笑う門には福来る」――ぜひ笑う習慣を取り入れ、健康に生かしていただけたらと思います。

参考HP:ラフターヨガジャパン日本笑いヨガ協会

解説:金子 由梨

解説:金子 由梨
済生会西条病院
内科部長

※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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