済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
血行を促進
笑う動作によって体内に酸素がたくさん取り込まれるため、全身の血のめぐりがよくなって新陳代謝も活発に。
筋力アップ
笑うと腹筋、横隔膜、肋間筋、顔の表情筋などをよく動かすので、筋力を鍛えることにもなります。
脳の働きが活性化
笑うと脳の血流が増加し、海馬(記憶をつかさどる)や大脳新皮質(意志や理性をつかさどる)などの働きが活性化。自律神経のバランスが整い、気分が安定する効果も。
高血圧の改善・予防
笑いによる腹式呼吸で、血管を拡張して血圧を下げる効果のある「プロスタグランジンI2」が分泌。糖尿病の合併症予防にもつながります。
免疫力が向上
笑うと脳の情報伝達物質「神経ペプチド」の生産が促進され、体内の免疫システムの先陣を担う「NK(ナチュラルキラー)細胞」を活性化します。
痛みが軽減
関節リウマチ患者さんに落語を聴いてもらったところ、「ストレスホルモン」と呼ばれるコルチゾール、炎症を誘発し悪化させるインターロイキン6の数値が低下したという研究があります。
幸福感が高まる
笑うと鎮静作用があるエンドルフィン、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニン、意欲を高めるドーパミンといった脳内ホルモンが分泌されます。
笑いは血糖値にどのような影響を及ぼすかについて調べた研究があります。糖尿病患者さんを対象に、昼食後に糖尿病の講義を聴講してもらった場合と、漫才を鑑賞して大笑いしてもらった場合とで、昼食前と食後2時間の血糖値を測定して比較しました。
その結果、講義聴講後の食後血糖値は平均122mg/dL上昇しましたが、漫才鑑賞後では平均77mg/dLに抑えられていました。
つまり、漫才で笑うことにより、平均46mg/dLも食後血糖値の上昇が抑えられたということです。
笑うと心や体を落ち着いた状態にする副交換神経が働き、ホルモンバランスが正常化し、血糖値を上げる作用があるコルチゾールの分泌が低下します。血糖値を下げるインスリンの作用とバランスが取れることで、血糖コントロールがよい状態になると考えられています。
笑いは脂肪細胞からの善玉物質「アディポネクチン」の分泌を促します。アディポネクチンには悪玉のLDLコレステロールを抑制し、傷ついた血管を修復して動脈硬化を防ぎ、インスリンの効きやすさを高める作用があります。
血中プロレニン濃度は、糖尿病の合併症(網膜症、腎症、神経障害)の発症につながる血管病変の指標の一つです。糖尿病患者さんに漫才を鑑賞して大笑いしてもらった前後で血中プロレニン濃度を測定したところ、漫才鑑賞後は腎症の有無にかかわらず正常値まで低下していました。このことから、笑いが糖尿病合併症の進行の抑制に有効であることが示されました。
また、笑うと腹式呼吸で肺を大きく広げるため、その刺激でプロスタグランジンI2が分泌されます。この物質は血圧を下げたり、血小板の凝集を抑えて動脈硬化を予防したり、血管を収縮させるホルモンを抑えたりします。これは糖尿病の合併症である脳梗塞、心筋梗塞の予防につながります。
笑うとエネルギーを消費することから、運動療法としても有効です。膝が痛くて歩けないなど、さまざまな理由で運動ができない人でも、寝ながら笑うことでも効果が期待できます。
糖尿病の治療は、食事や運動、薬物療法など長期にわたる自己管理を伴うため、メンタルヘルスの問題を抱えやすいです。ストレスの増加は過食の問題や、前向きに治療に取り組む気持ちの低下につながります。笑うことはストレスを解消させ、自己管理をしやすくします。
糖尿病患者さんは新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいといわれており、不安の声をよくお聞きします。日常から「笑い」を意識することで、血糖値を下げ、免疫力が高まり重症化予防が期待できます。
実は、作り笑いでも脳が楽しいと勘違いして、おかしくて笑ったのと同じ効果があることが実証されています。意識して口角を上げるなどするだけでも十分効果があります。
ミラーニューロンは他人の行動を見て、自分も同じ行動を取っているかのように、鏡のような反応をする神経細胞です。不機嫌な人を見てイライラしてしまうのも、ミラーニューロンの働きによるものです。 逆に笑顔の人を見ると、ついこちらも笑顔になります。皆さんも、ぜひ周囲に笑顔を伝染させてください。
笑いの量を確保する方法の一つとして、笑いヨガ(ラフターヨガ)をご紹介します。笑いの体操とヨガの呼吸法を組み合わせており、体操として笑うことで、笑いの健康効果を得ることができるというものです。興味のある人はぜひ「初めての笑いヨガ 基本編」をご覧ください。
状況が何一つ変わっていなくても、笑うという行動で気分がよくなることを実感すると、嫌な気持ちも自分でそれを選んでいるのだということに気づかされます。
「笑う門には福来る」――ぜひ笑う習慣を取り入れ、健康に生かしていただけたらと思います。参考HP:ラフターヨガジャパン・日本笑いヨガ協会
解説:金子 由梨
西条病院
内科部長
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