済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
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2015.10.16
中皮腫とは、臓器の表面と体壁の内側を覆う漿膜(しょうまく)の表面にある中皮細胞から発生すると考えられている悪性腫瘍です。
具体的に述べると、中皮細胞は、胸膜、腹膜、心膜、精巣鞘膜(せいそうしょうまく)に存在し、中皮腫はこれらの場所に発生しますが、胸膜発生例が約80~90%と最も多く、次いで腹膜が約10%、心膜や精巣鞘膜の中皮腫はまれです。
原因としてはアスベスト(石綿)が重要事項に挙げられ、中皮腫患者の80%以上にアスベストの暴露(さらされること)が証明されています。中皮腫は、アスベストの暴露から30~40年と非常に長い潜伏期を経て発生します。アスベストは過去に建築材料、電気絶縁材など多くの工業分野で使用されてきたことから、日本での患者増加のピークは2025年で、2005年から40年間で10万人以上の患者が発生することが予測されています。
胸膜中皮腫の症状として多いものは息切れと胸痛です。
中皮腫の診断には、胸部や腹部のX線検査、CTやMRIなどの画像診断が行なわれています。血液や胸水などの検査もされていますが、確実な血液検査法はまだありません。診断を確定するためには、腫瘍の一部を採取して病理組織検査を行なうことが必須です。
中皮腫は治療困難な予後の悪い腫瘍で、診断確定からの生存期間は7~17カ月といわれています。ただし、近年の診断技術の発達によって、胸膜に腫瘍が限局した早期の中皮腫が発見されるようになり、このような症例では「胸膜肺全摘術」あるいは「胸膜切除・肺剥皮術」を行ない、さらに化学療法と放射線治療を行なうことで5年無再発生存率が75%に達することが報告されています。
「医学解説」で述べたように、中皮腫患者の80%以上にアスベストの暴露(さらされること)が証明されていることから、アスベストを扱う職場で働いていた方は定期的な検診が必要です。さらに、アスベスト工場で働いていた方の家族が家庭内でアスベストに暴露した例や、アスベスト工場周辺の住人にも中皮腫の発生例が報告されていますので、該当する方も、定期的な健診を受けることをおすすすめします。また、古い建物にはアスベストを使用した建材が使われていることがありますので、知らない間にアスベストに暴露している危険性もあります。
胸部X線検査で胸膜プラークという病変が見つかると、アスベストに暴露していた可能性が高まるので、専門医を受診し定期的な検診が大切になります。
中皮腫の原因にアスベストが関係していることから、古い建物の解体現場などアスベスト暴露(さらされること)の恐れのある場所で働く場合には、適切な防塵マスクの着用が大切です。
過去にアスベスト暴露を受けた方に、中皮腫の発生を予防する確実な方法はよく分かっていません。ただし、アスベストは発癌物質を吸着する性質がありますので、禁煙が推奨されます。
解説:堤 雅弘
中和病院
病理診断科部長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。