社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

2020.07.15

骨髄異形成症候群

myelodysplastic syndrome

解説:藤田 直紀 (山口総合病院 院長補佐)

骨髄異形成症候群はこんな病気

血管内の血液細胞は赤血球、白血球、血小板の3種類に分類されます。赤血球は酸素を全身に運び、白血球は細菌やウイルスなどの異物を攻撃して身体を守り、血小板は血管の破れた部位をふさいで出血を止めるはたらきがあります。

これらの血液細胞は、骨の中心にある骨髄でつくられています。骨髄にはすべての血液細胞のもとになる造血幹細胞があり、いろいろな成長過程をたどりながら増えていき、最終的に成熟した血液細胞となって骨髄から血管内の血液中に出ていきます。

(特集記事「正しく知ろう!骨髄を提供する「ドナー」になるために」より)

骨髄異形成症候群では造血幹細胞に異常が起こるために血液がつくられる過程が正常に進まなくなり、異常な形を持つ血液細胞や、はたらきが不完全な血液細胞がつくられるようになります。このような血液細胞は成長の途中で壊れやすいため(無効造血と呼ばれます)、血管内の血液細胞の減少につながります。病気の進行とともに芽球と呼ばれる未熟な若い血液細胞が増えていき、一定の割合を超えた場合には急性白血病(血液のがん)に移行したと診断します。

血液細胞の染色体(遺伝子の情報が入っている構造体)に異常がしばしばみられることから、造血幹細胞の遺伝子がなんらかの原因により異常をきたすことで発症すると考えられています。「遺伝子の異常」といっても患者さんの血液細胞の遺伝子の異常であって、親からの遺伝でこの病気になったり、子どもに遺伝したりすることはありません。

骨髄異形成症候群の症状

異常がある血液細胞の種類や進行度によってさまざまですが、赤血球数の減少では息切れ、動悸、倦怠感などの貧血症状、白血球数の減少では感染症の併発に伴う症状(発熱、かぜ症状など)、血小板数の減少では出血(皮膚の青あざ、鼻血、歯茎からの出血)しやすくなる、血が止まりにくくなるなどの症状がみられるようになります。

骨髄異形成症候群の診断

血液検査でこの病気が疑われる場合には、骨髄に針を刺して骨髄液を少量採取する骨髄穿刺(せんし)を行ない、骨髄液を調べます。異常な血液細胞の種類や細胞減少の程度、骨髄中の造血の状態や芽球の有無、染色体異常の有無などから病型、重症度、経過の見通し(予後)などを判断します。

骨髄異形成症候群の治療法

病型、経過の見通し、重症度分類に加えて年齢や全身状態などを考慮して治療方針を決定します。

白血病へ移行する危険度が低く、症状がない場合には、経過観察の方針となることがあります。また、病状によっては貧血を改善させる目的で赤血球造血刺激因子の投与を行ないます。特定の血液細胞遺伝子異常を持つ患者さんには、免疫調整薬の使用も選択肢としてあげられます。

白血病へ移行する危険度が高い場合には、異常細胞内の情報伝達に関わる新規薬剤や抗がん剤の使用が検討されます。一部の患者さんには造血幹細胞移植が行なわれることがあります。造血幹細胞移植はこの病気を治すことのできる唯一の治療法ですが、強力な化学療法や放射線療法を伴う治療であるため、実施にあたってはさまざまな条件を慎重に検討する必要があります。

この病気によるさまざまな症状や合併症に対しては以下の治療を行ないます。このような治療を支持療法といいます。

貧血症状が強い場合
赤血球輸血を行ないます。
出血症状がある場合
血小板輸血を行ないます。
感染症を合併する場合
抗生物質を投与したり、必要に応じて白血球の産生を活発にさせる注射剤を使用したりすることがあります。

「症候群」という病名がついているように、この病気の患者さんの状態はさまざまに異なっています。患者さんの状態に応じて治療することが重要です。

健康診断やほかの病気で通院中の際の採血検査で赤血球、白血球、血小板のうちいずれか一つ、または複数の血液細胞数の減少が認められることをきっかけにこの病気が発見されることがしばしばあります。したがって、健康診断や定期的な採血を受けることはこの病気の早期発見につながります。

発症の原因が解明されていないため、予防法はありません。ただし、貧血症状やかぜ症状といった病気のサインを見逃さず早期に治療することで、ほかの病気の併発を防げる場合もあります。

藤田 直紀

解説: 藤田 直紀
山口総合病院
院長補佐


※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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