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済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
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2021.12.23
口腔がんは口の中にできる悪性腫瘍の総称です。口の中は、歯以外は粘膜に覆われています。口腔がんの90%以上はこの粘膜上皮から発生するがんです。ここでは、頻度の高い、口腔粘膜(重層扁平上皮)から生じる口腔がん(扁平上皮がん)について説明します。
口の中は舌、口腔底、上下歯肉、頬粘膜、硬口蓋などの部位に分けられます。がんが最も多く発生するのは舌で、口腔がん全体の約6割を占めます。舌の背面(舌を出したときに表に見える部分)にできることは少なく、舌の縁、舌の下面に発生します。
口腔がんの原因は明らかにされていませんが、喫煙、飲酒、飲食物などの化学的刺激、尖った歯や入れ歯の機械的刺激、粘膜の炎症、ウイルス感染、加齢などのリスク因子が複雑に関連し、段階的にがんへ移行すると考えられています。
主な症状は口の中の“しこり”や“潰瘍”で、初期症状としては「食べものがしみる」「口内炎がなかなか治らない」「赤い斑点、白い斑点がみられる」などがあります。進行すると、持続する痛み、出血、口臭、口の開けづらさ、食事の食べづらさ、首の腫れなど、症状がひどくなっていきます。
口腔がんが疑われたら、病変ががんであるのかを鑑別する病理組織検査、がんの進行状態を調べるCT、MRI、超音波などの画像検査、さらに、治療を受けるための身体の状態を調べる検査が行なわれます。
口腔がんの治療は切除手術、放射線治療、化学療法が基本で、それぞれを組み合わせて行ないます。がんの大きさや転移の程度に応じて推奨されている「標準治療」を基に治療法が決定されます。標準治療とは科学的根拠に基づいた観点で検討された最良の治療法のことです。
早期がんは手術による切除が行なわれます。進行がんは手術と、化学放射線療法を組み合わせた治療が行なわれます。また、切除した場所に別の部位の組織を移植し、機能を再建する手術も併せて行なわれます。早期であるほど手術侵襲(手術による身体へのダメージ)、機能障害が少なく、生存率が高くなります。したがって早期発見・早期治療が大切です。
口腔がんのできやすい場所は舌、歯ぐき、頬の粘膜などです。また、目で見て、指で直接触わって確かめることができます。口腔がんは比較的見つけやすいので早期治療が可能です。
特に、中高年で喫煙、飲酒などの習慣がある人は定期的に自分で口の中をチェックしてみてください。治らない口内炎、白い斑点、赤い斑点は早期の症状である場合があります。
口腔がんができる主な要因は喫煙と飲酒で、両方の習慣がある人は、どちらか片方の習慣がある人よりリスクが高まることが分かっています。
予防のためには、まずは禁煙して、過剰なアルコールの摂取を控えることが大切です。また、歯や義歯が当たって口内炎を繰り返したり、口の中に違和感があったりする場合は、口腔外科などを受診することをお勧めします。
解説:堀内 俊克
横浜市東部病院
口腔外科部長
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