2020.05.13 公開
中咽頭がん
oropharyngeal cancer
解説:西川 周治 (吹田病院 耳鼻咽喉科科長)
中咽頭がんはこんな病気
中咽頭がんは中咽頭にできる悪性腫瘍です。
咽頭は、鼻の奥から食道の入り口までの食べ物と空気が通る部分を指します。上からそれぞれ、上咽頭、中咽頭、下咽頭の三つの部位に分かれています。中咽頭は口蓋扁桃(扁桃腺)や口蓋垂(のどちんこ)、舌根(舌の奥の方)などからなります。
発がんの要因には、喫煙や飲酒が関係していることが知られていますが、近年はヒトパピローマウイルス感染による発症例が増加しています。50~60歳台に多くみられる傾向があり、発症率は人口10万人に対し0.2~0.3人ほどです。また、中咽頭には扁桃腺などのリンパ組織が多く存在するため、血液がんの一種である悪性リンパ腫も発生しやすく、検査で見分けることが必要です。
中咽頭がんの症状
早期での症状は乏しいですが、進行すると喉の痛みやいびき、口の開けにくさ、口臭といった症状が現れます。また、首のリンパ節への転移の頻度が高く、首のしこりなどがみられます。
中咽頭がんの治療
治療法には、手術、放射線治療、化学療法が用いられます。
早期がんでは、経口切除や放射線治療などが行なわれます。
進行がんでは、放射線治療と抗がん剤を併用した化学放射線治療もしくは遊離皮弁(前腕や大腿など体の別の部分の組織を採取し頸部の血管とつなぎ合わせる移植)を用いた再建手術を要する手術が行なわれます。
ある程度は口の中を観察することで見えますが、舌根部は自分で見ることは難しく、耳鼻咽喉科での観察が必要になります。
早期での症状は乏しく、首のリンパ節に転移することが多いため、首のしこりを自覚した際は、耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
喫煙、飲酒などの発がんの原因となる影響を避けることが大切です。ヒトパピローマウイルス感染に伴う中咽頭がんが増加していますが、このウイルスは、子宮がんの原因でもあり、オーラルセックスやキスなどで感染することが知られています。それらの行為での感染に注意を払う必要があります。
解説:西川 周治
吹田病院
耳鼻咽喉科科長
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