済生会は、明治天皇が医療によって生活困窮者を救済しようと明治44(1911)年に設立しました。100年以上にわたる活動をふまえ、日本最大の社会福祉法人として全職員約64,000人が40都道府県で医療・保健・福祉活動を展開しています。
済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
主な症状やからだの部位・特徴、キーワード、病名から病気を調べることができます。症状ごとにその原因やメカニズム、関連する病気などを紹介し、それぞれの病気について早期発見のポイント、予防の基礎知識などを専門医が解説します。
全国の済生会では初期臨床研修医・専攻医・常勤医師、看護師、専門職、事務職や看護学生を募集しています。医療・保健・福祉にかかわる幅広い領域において、地域に密着した現場で活躍できます。
一般の方の心身の健康や暮らしの役に立つ情報を発信中。「症状別病気解説」をはじめとして、特集記事や家族で楽しめる動画など、さまざまなコンテンツを展開しています。
2020.05.07
上咽頭がんは上咽頭にできる悪性腫瘍です。
咽頭は、鼻の奥から食道の入り口までの食べ物と空気が通る部分を指します。上からそれぞれ、上咽頭、中咽頭、下咽頭の三つの部位に分かれています。上咽頭は鼻からの空気の通り道になり、脳を支える頭蓋底(頭蓋骨の底にあたる部分)のすぐ下に位置します。左右の側面には耳へつながる耳管(「耳抜き」の管)があります。
上咽頭がんは、中国南部や台湾、シンガポールなどでの発生が多く、ヘルペスウイルスの一種であるEBウイルス(エプスタイン・バー・ウイルス)が発がんに関与していることが知られています。
40~60歳に多くみられ、まれに20歳台の若年者に発症することもあります。日本での発症率は人口10万人に対して0.3人ほどで、頭頸部がん(鼻や口、喉、あご、耳など顔面から首の範囲に発生するがん)の中では比較的まれな病気です。
上咽頭は部位の構造上、通常の鼻の穴からの観察は難しく、鼻咽腔ファイバースコープ検査などで観察する必要があり、病状が進行してから発見されることも少なくありません。
鼻血、鼻づまりや、耳管に影響が出ることによる滲出性中耳炎(鼓膜の内側の中耳に水がたまる状態)になり、耳が詰まったように感じます。
頭蓋底にがんが広がっていくことで脳神経の障害(物が二重に見える、声がれ、飲み込みにくさなど)が出現することがあります。また、首のリンパ節に転移することが多く、首にしこりができて発見されることもあります。
上咽頭は鼻の奥にあり、そのすぐ上には脳神経が密集しています。そうした解剖学的な位置の問題により、手術治療が選択されることはまれです。放射線治療が中心となり、その進行度により抗がん剤を同時に使用する化学放射線治療を行なうことがあります。
首のリンパ節転移については、治療後にがんが残るようであれば、手術で摘出することがあります。
早期に症状が出ることは少なく、早期発見は難しいですが、繰り返す鼻血や鼻づまり、成人での長引く滲出性中耳炎がある際には、耳鼻咽喉科を受診し、鼻咽腔ファイバースコープ検査での上咽頭の観察をおすすめします。
ヘルペスウイルスの一種であるEBウイルス(エプスタイン・バー・ウイルス)の感染が原因と知られていますが、このウイルスは大勢の人がすでに体内に持っており、症状が出ないことのほうが多いです。
EBウイルスは唾液中に存在することから、幼少期に食べ物の口移しやスプーンの使い回しなどで感染し、思春期にキスや回し飲みなどによって感染が広がっていき、そのまま体内にとどまり続けます。そのため、感染を予防することは困難であり、がんの早期発見が大事になります。
解説:西川 周治
吹田病院
耳鼻咽喉科科長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。