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肺膿瘍

Lung Abscess

解説:佐々木 義明 (済生会奈良病院 副院長 兼 内科統括部長)

肺膿瘍はこんな病気

肺膿瘍(はいのうよう)は、肺に一般の肺炎より強い炎症が起き、肺組織が破壊されて空洞となりそこに膿(うみ)がたまる病気です。肺化膿症(はいかのうしょう)と呼ばれることもあります。感染によってできた空洞は、感染が治っても元に戻らないこともあります。原因となる細菌には、バクテロイデス属などの嫌気性(けんきせい)菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌、クレブシエラ・ニューモニエ菌などがあります。また、病原菌が肺以外に発生した感染巣から血流に乗って肺に到達し、肺膿瘍を発症することもあります。

肺膿瘍

肺膿瘍は、一般より抵抗力が低下している人に発症しやすい病気です。すなわち、血糖コントロールの悪い糖尿病の人、アルコール依存症の人、関節リウマチなどで免疫を低下させるような薬を普段服用している人は要注意です。また、以前に結核にかかったことのある人や肺がんを合併している人など、肺の局所の抵抗力が低下している状態の人にも起こりやすいとされています。

肺膿瘍の症状

主に寒気、倦怠感、高熱、せき、痰といった症状が現れます。痰は黄色や緑色で、時には血が混じることもあり、嫌気性菌が原因で嫌な臭いがすることもあります。病変が胸膜(肺の表面と内側を覆う膜)に波及し、胸の痛みが生じることもあります。検査では、血液中の白血球の増加や炎症反応の増加が認められます。胸部エックス線画像や胸部CT検査では、肺の中に空洞病変と、空洞の中にニボーと呼ばれる鏡面形成像がみられます。

肺膿瘍の治療法

抗菌薬(抗生物質)を使用し薬物治療を行なうのが原則です。ただし、一般の肺炎より重症の感染症のため入院が原則で、治療期間は長くなり1カ月以上となることも少なくありません。抗菌薬による治療のみでは効果が不十分と判断された場合は、外科手術やドレナージ(CT画像を見ながら膿の中に針を刺して細い管を挿入し、膿を吸い出す処置)治療が行なわれます。外科手術としては、膿ごと肺の一部を切り取ってしまうことが多いです。

早期発見のポイント

肺膿瘍になると、発熱、倦怠感、寒気、せき、黄色・緑色や膿のような痰がみられます。ただし、はじめはかぜと同じような症状なので、肺膿瘍とはなかなか分かりません。一般的には、数週間かけてゆっくりと症状が進みます。顕著な体重減少に気づくこともあります。痰はしばしば腐ったような嫌な臭いを発し、血が混じることもあります。肺膿瘍でなくても肺炎にかかっている可能性もあるので、発熱を伴うかぜのような症状が5日間以上続く場合、呼吸器専門医のいる医療機関を受診するようお勧めします。また、関節リウマチなどの膠原病や悪性疾患の治療中で、免疫が低下するような薬を処方されている患者さんは、定期的なレントゲン画像のチェックも早期発見に役立ちます。

予防の基礎知識

肺膿瘍の原因の多くは口腔内の細菌(特に嫌気性菌)による感染です。口腔内を不潔にしていたり、虫歯を放置していたりすると、誤嚥(ごえん)した際に多くの細菌が肺に入ったり、血液に入りそこから肺に進入したりして肺膿瘍が起こりやすくなります。
このため、予防法の第一歩として、まず口腔内の嫌気性菌の数を増やさないように口腔ケアや虫歯の治療が重要です。毎日の歯磨きのほかに舌のクリーニングも大切です。虫歯は痛みがなくても、そのまま放置しないで歯科医で治療をしてもらいましょう。また、免疫が低下している人に起こりやすい病気ですので、糖尿病を持つ人は日常の血糖コントロールを良好にして、お酒の好きな人はアルコールの摂取量を控えめにしましょう。関節リウマチなどの膠原病や悪性疾患の治療中で、免疫が低下するような薬を処方されている患者さんは、定期的に肺のレントゲン画像のチェックを受けましょう。

佐々木 義明

解説:佐々木 義明
済生会奈良病院
副院長 兼 内科統括部長

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