社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

直腸炎

proctitis

解説:小島 正幸 (常陸大宮済生会病院 院長)

直腸炎はこんな病気

直腸は肛門につながる長さ約15cmの大腸の末端部分で、ここに炎症を起こすのが直腸炎です。出血や粘液の排泄がみられ、ほとんどの場合、痛みを伴いませんが、肛門と下腹部に激しい痛みを感じることもあります。

腸の構造

直腸炎の原因

直腸炎が生じる主な原因として以下のものがあります。原因不明の場合もあります。

(1) 性感染症(梅毒クラミジア感染症、HIV感染症など)
(2) 一般的感染症(カンピロバクター、サルモネラ、赤痢など)
(3) 放射線治療
(4) 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎クローン病)
(5) 薬剤性腸炎
(6) 虚血性大腸炎
(7) 腸型ベーチェット病

直腸炎の症状

下痢や粘血便(粘液と血が混じった便)、排便時の痛み、テネスムス(強い便意があるのに便がなかなか出ない状態)などがあります。また、発症の原因となる病気によってさまざまな症状を伴います。例えば、炎症性腸疾患では発熱や体重減少、貧血などの症状が生じることがあります。そのほかには、排便時痛などの痛みや出血が主な症状として出るものや、発病がゆっくり進み、初期症状として残便感と粘血便だったものが数カ月から数年かかって進行するものもあります。 

直腸炎の診断

東南アジア地域などへの渡航歴、抗菌薬の服用歴、肛門性交の有無、最近の食事内容、放射線治療歴の有無など、診断には病歴の確認が重要となります。さらに、原因を特定するために便培養検査、血液検査、大腸内視鏡検査などを行ないます。

直腸炎の治療

発症の原因に対して根本的な治療を行なうことが重要です。性感染症の場合、病原体に応じて抗菌薬などを使用します。また、放射線治療に対しては炎症をおさえるための抗炎症薬や、止痢薬(下痢を止める薬)などを用いることがあります。出血に対しては内視鏡的止血術を行ないます。
炎症性腸疾患でも薬物療法で炎症をおさえることが基本ですが、手術を行なうこともあります。

直腸炎の原因が感染症の場合は、感染の機会があったかどうかを確認することが重要です。性感染症では肛門性交の有無など、一般的感染症では東南アジア地域などへの渡航歴や最近の食事内容などが参考になり、病気の発見につながります。病院を受診した際に、医師からの質問には正確に答えるようにしましょう。

直腸炎の原因となる病気を予防することが大切です。
性感染症の予防としては、性交渉時にコンドームを使用することや、不特定多数の相手と性行為をしないことなどが挙げられます。場合によってはパートナーの治療も必要になります。
一般的感染症の予防としては、東南アジア地域などを訪れた際は飲食物に注意し、生ものや生水、氷などを摂取しないようにします。また、食肉は十分加熱調理してから食べるようにしましょう。
炎症性腸疾患は原因不明で予防法はありませんが、経口避妊薬や非ステロイド性消炎鎮痛剤は炎症性腸疾患の発症、増悪との関係があるといわれています。

小島 正幸

解説: 小島 正幸
常陸大宮済生会病院
院長


※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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