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2018.10.03
厚生労働省が指定する難治性の炎症性腸疾患の一つです。近年、我が国の患者数は増加傾向にあり、国から援助を受けている特定疾患医療受給者の数は20万人に迫っています。原因は十分には解明されていませんが、本来私たちの身体を守るはずの免疫システムに異常が生じ、主に大腸の粘膜に持続的な炎症が起こります。20代で発症する人が多いのですが、50代以降で発症することも珍しいことではなく、小児から高齢者まで幅広い年代の人に見られます。
腸の炎症が直腸から連続的に上方(口側)に向かって広がるのが一般的で、炎症の範囲によって直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型の三つに大きく分類されます。
図:潰瘍性大腸炎の種類
病気の活動期には血液が混ざった下痢のほかに粘液の排出を繰り返し、腹痛や発熱を伴うことがあります。診断については、血液検査や便の細菌検査に加え、内視鏡検査などの画像検査によって行ないます。特に、内視鏡検査は他の腸疾患の除外や病気の進行の把握、治療の効果判定を行なえるほか、炎症を繰り返す腸粘膜に発生するがんの早期診断・治療などに役立つため、潰瘍性大腸炎の診療に欠かせない検査となっています。
残念ながら完治できる治療法はありませんが、近年は使用できる薬の種類や数が増え、症状の改善はもちろん粘膜傷害そのものの治癒を目指せるようになりました。炎症性腸疾患の基本薬である5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤に加えて、炎症を抑える効果があるステロイドや免疫調整薬(チオプリン製剤等)、生物学的製剤(抗TNF-α抗体製剤等)などを病状に応じて選択し使用することが一般的です。
内科的治療としては、薬剤投与の他に大腸炎の患部で病気の形成に関わっている白血球の除去を目的とした「血球成分除去療法」も選択肢の一つとなっています。一方で、外科的治療は内科的治療の限界を越える場合に考慮され、大量出血や高度の狭窄(きょうさく=間が狭まっている状態)、がん、腸穿孔(ちょうせんこう=腸に穴が空いた状態)または穿孔を生じる危険性が高い中毒性巨大結腸症などで適応となります。
軟便や血性の下痢を繰り返すような場合には、消化器内科を受診し内視鏡検査を受けるようにしましょう。小中学生でも症状があるときは、小児科の先生に相談の上、潰瘍性大腸炎の疑いがあれば内視鏡検査を受けることを検討してください。
同じ炎症性腸疾患に分類されるクローン病と異なり、一般的に食事制限はありません。しかし、病気の活動期には脂質の多い食事や刺激物、アルコールの過剰摂取は避けるのが望ましいと考えられます。心身のストレスも症状の悪化につながるため、規則正しい生活を心がけ十分に休息を取るようにしましょう。
解説:岡田 明彦
大阪府済生会中津病院
消化器内科主任部長
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