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済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
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2022.08.17
腸の一部が隣り合う肛門側の腸に入り込んで閉塞することで、内容物の通過や血液の流れが悪くなる病気です。生後3カ月から2歳までの子どもによくみられます。
主に小腸と大腸の境目辺りで起こり、9割以上が原因不明といわれています。ただ、しばしば風邪をひいた後に起こることや、小腸の終わりの部位はリンパ組織が発達している点から、ウイルス感染によりリンパ組織が腫れることが関連しているのではないかと考えられています。また、まれに良性および悪性の腫瘍などが、この病気の原因となる場合があります。
急な腹痛で始まることが多いですが、乳幼児は自分で症状をうまく説明できないため、突然不機嫌になったり激しく泣いたりして親など周囲の人が気づくこともあります。また、腸の動きに合わせて腹痛が強くなったり弱くなったりを繰り返し、腹痛が軽い時間帯には元気そうに見えることもあるのが特徴的です。
その他の症状として嘔吐がよくみられ、時間が経過すると血便がみられることもあります。また、顔色が悪くなってぐったりすることもあります。
おなかを丁寧に触ると、入り込んで重なり合った腸の塊に触れることがありますが、患者さんが激しく泣いていると分からないことが多いです。
よく用いられるのは超音波検査で、ほとんどの場合はこれで診断ができます。それ以外には、X線検査やCT検査が診断の助けになることがあります。
症状の出現後24時間以内で、患者さんがぐったりしていなければ、まずは高圧浣腸という治療を行ないます。高圧浣腸の方法は施設によって異なりますが、高圧浣腸とはX線や超音波を用いながら肛門に入れた管から造影剤、空気、生理食塩水のどれかを高い圧をかけて注入して、腸を正常な状態に戻します。成功率は9割以上といわれています。
高圧浣腸が失敗したり、症状の出現から24時間以上経過していたり、ぐったりしている場合には、高圧浣腸はせずにはじめから手術を行ないます。状態によっては腸の一部を切り取ることもあります。
なお、高圧浣腸による治療が成功しても、約1割の確率で再発します。再発のタイミングは、治療後すぐのことが多いといわれているため、よくなった後も同じ症状が再び起こらないか注意深く観察する必要があります。
腸重積症は急な腹痛で始まることが多いですが、子どもは症状をうまく訴えられないので、突然の不機嫌や激しく泣くことを繰り返す場合には医療機関を受診してください。それ以外にも、嘔吐を繰り返したり顔色が急に悪くなったりする場合にも受診をお勧めします。
症状のみでは胃腸炎との区別が難しいこともありますが、診断が遅れるにつれて手術が必要になる可能性が高くなるので、上記の症状があれば一度受診することが大事です。
ほとんどが原因不明のため、残念ながら予防する方法はありません。
疑わしい症状がみられたら早めに医療機関を受診するようにしましょう。また、医師の診察を受けるまでは、子どもが欲しがっても飲食は控えるようにしてください。
解説:磯浦 喜晴
泉尾病院
小児科 医長
※所属・役職は本ページ公開当時のものです。異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。