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済生会は、405施設・437事業を運営し、66,000人が働く、日本最大の社会福祉法人です。全国の施設が連携し、ソーシャルインクルージョンの推進、最新の医療による地域貢献、医療と福祉のシームレスなサービス提供などに取り組んでいます。
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2024.09.11
病原体を持つダニに刺咬されることで伝染するダニ媒介感染症の一種で、重症熱性血小板減少症候群ウイルス(Banyangvirus Huaiyangshan banyang-virus)を保有しているマダニに刺されることで感染します。
主にマダニが活発に動き出す春~秋頃に、西日本を中心に発生します。しかし、患者が報告された地域以外でも重症熱性血小板減少症候群ウイルスを保有するマダニや、感染している動物は発見されているので、エリアに関わらず注意が必要です。日本では4類感染症に指定され、診察した医療機関は保健所へ届け出る必要があります。
マダニに刺されてウイルスに感染すると、6~14日後に発熱、倦怠感、頭痛などが起こり、続いて嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状が現れます。重症化すると、意識障害などの神経症状や出血症状(歯肉出血、皮下出血、下血など)、多臓器不全(複数の臓器障害が起きる状態)などの症状に陥り、発症した方の6~30%が死に至ります。
ウイルスやウイルス遺伝子などを尿や血液、喉の奥にある咽頭扁桃(いんとうへんとう)付近の粘液を摂取した咽頭拭い液から検出する方法、もしくは、血液検査でウイルスに対する抗体を検出する方法で診断し、重症熱性血小板減少症候群と判断されます。血液上では、血小板や白血球の減少や、AST、ALT、LDHなどといった特定の血清酵素の値の上昇などが見られます。
残念ながら有効な治療薬はありません。発熱や頭痛に対して解熱・鎮痛薬であるアセトアミノフェンを投与するなど、症状を和らげる治療を行ないます。
症状および通常の検査から早期診断することは困難です。屋外での活動後は、マダニに刺されていないか確認しましょう。特に首、耳、わきの下、足の付け根、手首、膝の裏は自身から見えづらく気づきにくいので、入浴時などに念入りにチェックすることが重要です。
マダニに刺された可能性がある場合、数週間は体調の変化に注意し、発熱などの症状が出たときは速やかに医療機関で診察を受けましょう。その際、マダニに刺されたことを医師に伝えてください。
有効なワクチンはないため、マダニに刺されないよう意識し、事前に予防することが重要です。草むらややぶなど、マダニが多く生息する場所に入る場合は長袖・長ズボンを着用し、肌を露出するサンダルなどは履かないようにしましょう。
マダニに効果のある虫除け剤の成分には、DEET(ディート)やイカリジンなどがあります。虫除け剤の中には服の上から使えるタイプもあるので、対策をした服装の上から使用することで、さらに効果を高めることもできます。
重症熱性血小板減少症候群は中国や韓国でも発生しているので、これらの国へ行く場合は注意が必要です。重症熱性血小板減少症候群に感染し、発症したネコやイヌに接触することで感染する場合もあるので、旅先の動物とむやみに接触することは避けましょう。
解説:德山 猛
中和病院
副院長 内科 地域連携部部長 呼吸器センター副センター長
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