ウイルスは人間だけの間で感染するわけではありません。動物だと、哺乳類、鳥類、両生類、魚類、昆虫などで感染が確認されています。
野生のコウモリやサル、ヒトコブラクダなどの動物はさまざまなウイルスを持っているとされ、直接(あるいはフンや尿に)触れたり、噛まれたり、加熱していない肉を食べたりすることなどで人間にも感染してしまうことがあります。新型コロナウイルスはコウモリやセンザンコウなどの野生動物が宿主ではないかと考えられています。
でも、本当に気を付けないといけないのはウイルスを持つ小さな蚊やダニ。亜熱帯地方などでは警戒していても、いつのまにか刺され、デング熱やマラリアなどの感染症にかかってしまうことも。蚊は「地球上で最も人間を殺している生物」なんていわれています。
実は人類が初めてウイルスを発見したのは19世紀末、動物でも人間でもなく、植物から。タバコモザイクウイルスといって、タバコなどの葉に感染するウイルスです。現在、植物に感染するウイルスは世界で700種類以上確認されています。ウイルスに感染した植物は、葉がモザイク状の模様になったり、熟す前に果実が落ちたり、全体がしぼんで縮んだり……元気がなくなってしまうのは人間と同じ。主にアブラムシなどの昆虫や、土、植物の汁、接ぎ木などを通して感染し、広がっていくとされています。
日本では、2009年に東京都青梅市で見つかったウメへの感染が有名です。兵庫、大阪など12都府県にまで広がり、多くの木が伐採されました。これまで日本で発生していなかったウイルスの報告が増えてきたのは、海外から植物の輸入が増えたためだと考えられています。余談ですが、植物のウイルス感染について書かれた世界最古の記録は日本の『万葉集』といわれているそうです。
●人間からペットへの感染
人間からペット(以下イヌ、ネコ)に感染したという例が海外でいくつか報告されています。イヌでははっきりした症状が確認されていませんが、ネコでは呼吸器や消化器の症状がみられた例もあり、ネコからネコへの感染もあるようです。ニューヨークの動物園では、飼育員からとされるトラやライオンへの感染も確認されています。ペットを連れての散歩は、通行人やほかの動物との距離を十分に保ち、人混みの場所は避けたほうがよさそうですね。
●ペットから人間への感染
イヌやネコにも固有のコロナウイルス感染症がありますが、人間を含め、ほかの動物に感染したという報告は今のところありません。ただし、動物から人間へうつる感染症の予防のため、動物との過度なスキンシップは控えたほうがよいでしょう。普段から、動物に触れた後は、手洗いやアルコールでの消毒を心がけましょう。