社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

済生会肝臓共同研究グループ

会長挨拶

岡上 武済生会吹田病院
名誉院長
岡上 武

私は、2007年4月吹田病院院長に就任し、翌年院長会副会長を拝命しました。当時院長会には80病院が所属していましたが、今後とも済生会が地域住民や若い医師にとって魅力ある急性期病院として存続するには、最新の知識や技術を共有し、質の高い医療を推進することが重要と考え、主な疾患でprospective study を推進する必要性を院長会で訴えてきました。その結果、済生会全体で新薬の臨床治験を引き受ける組織が構築され、種々の分野で共同研究を推進することが決定しました。

私は2008年から3年間、厚生労働省肝炎等克服緊急研究対策事業の中で非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)研究班研究代表者を務めましたが、済生会のスケールメリットを生かしたprospective studyをまず肝臓の分野で行なうことを提案し、全病院に参加希望の有無を確認し、12病院から賛同を得ました。

事務局を当院に置き、私が代表世話人となり、事務局責任者を当院消化器内科の島俊英副院長(現在院長)とし、2014年7月5日に大阪で第1回の会合を開催しました。その後本部から毎年研究助成を頂きながら、毎年2回会合を持ち、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、C型肝炎、肝臓がん、急性肝炎のdatabaseを作成し、共同研究が進んでいます。C型肝炎は治療薬開発が進歩し、直接ウイルスの遺伝子に作用する薬剤(DAA製剤)の6~12週間の服用で肝硬変も含めてほとんどの患者でウイルス排除(SVR)が可能になっています。しかし、SVR後の肝発がんは臨床的に重要です。また、肥満・糖尿病などの生活習慣病を背景とするNAFLD患者は年々増加し、今や罹患者が2000万人以上、うち20%近くは予後不良のNASHと推定され、NASHの病態解明、診断法、治療法の開発が進められています。

このように肝臓病の地図が大きく変わってきた状況で、済生会肝臓共同研究グループの果たす役割は年々大きくなっています。さらに多くの施設が参加し、肝臓のみならず消化管領域でもいくつかの重要な疾患のdatabaseを作成し、知識・技術の向上を共有し地域住民の健康保持に貢献するとともに、国際的に評価されるような臨床研究成果が得られることを期待しています。意欲ある多くの若い先生方の参加を希望しています。