社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

薬剤師が教える薬のキホン

2023.12.04

Vol.13

慢性疾患などで利用される「リフィル処方箋」とは?

2022年4月から日本でも取り入れられた「リフィル処方箋」。一部の病院やクリニックで徐々に使われ始めていますが、全国的にはまだまだ導入が進んでいないのが現状です。そもそもこのリフィル処方箋とはどういったものでしょうか? 分かりやすく解説していきます。

リフィル処方箋とは

処方箋とは、病気の治療に必要な薬の種類や量、服用方法などを記載した文書です。医師が作成・発行し、薬剤師はその文書をもとに薬を調剤します。1枚の処方箋で薬を受け取れるのは1回のみです。一方、リフィル処方箋は1枚で複数回、薬を受け取れるのが特徴です。

リフィル処方箋のリフィル(refill)とは、「補充する」「おかわり」という意味になります。通常の処方箋と異なり、リフィル処方箋は「1枚の処方箋で同じ薬をおかわりする」という意味合いから、“一定期間内に繰り返し使用できる処方箋”と定義されています。
このリフィル処方箋は、高血圧脂質異常症糖尿病、花粉症といった慢性疾患などで、症状が安定している患者さんに対して、医師が「しばらく通院しなくても問題なし」と判断した場合にのみ使われます。

リフィル処方箋
リフィル処方箋は赤字の部分を記載する ※実際の処方箋はすべて黒字での記載
(厚生労働省「令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)」から転載)

1枚の処方箋を最大3回まで繰り返し使用できるため、医師の診察は1回目のみで、2回目以降は通院することなく、薬局で薬を受け取ることができます。

通常の処方箋は1枚で1回だけ薬を受け取れるが、リフィル処方箋は1枚で最大3回薬を受け取れる

海外で先行するリフィル処方箋

海外ではアメリカやイギリス、フランスなど先進国を中心にリフィル処方箋がすでに導入されています。利便性や効率性などが認められ、この制度は日常生活で当たり前のように扱われています。一方、日本では、受診回数が減ることで症状悪化や副作用の発見が遅れてしまう危険性があるなどの理由から、さまざまな議論が重ねられ、導入が遅れていました。

海外ではリフィル処方箋がすでに導入されている国も
海外ではリフィル処方箋がすでに導入されている国も

リフィル処方箋のメリット・デメリット

実際にリフィル処方箋を使うとどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか? 以下にまとめました。

メリット

  • 患者さんの通院回数が減ることにより、負担軽減につながります
  • 日本で問題となっている“医療費膨大”の抑制につながります
  • 医療機関への受診が減ることで、コロナウイルスなどの感染症にかかるリスクが減ります

デメリット

  • 医師による診察や検査を受ける機会が減ります
  • 次の調剤予定日(薬局で薬をもらう日)まで、患者さん自身で処方箋を保管しておく必要があります
  • 処方箋を紛失した場合や、受け取り期間が過ぎてしまった場合に、自費での再発行や再受診が必要となります

リフィル処方箋の注意点

リフィル処方箋について、次の点について注意が必要です。

すべての薬が対象となるわけではありません

新しく発売されたばかりの薬や、医療用麻薬(がんによる痛みなどを和らげる薬)、向精神薬などは対象外となります。これらにはもともと処方日数に制限が設けられているためです。意外と思われるかもしれませんが、一部の睡眠薬や湿布薬なども対象外となりますので、注意が必要です。どの薬がリフィル処方箋の対象となるかは、医療機関で尋ねてみましょう。

リフィル処方箋による薬の受け取りは期限が定められています

受け取りの期間は、1回目は通常の処方箋と同様、発行日を含めて4日間です。2回目以降は次回調剤予定日の前後7日以内です。薬局で次回調剤予定日を教えてくれますので、受け取り忘れがないように注意しましょう。

気になる症状や体調変化がある場合には、医療機関を受診しましょう

リフィル処方箋を使った場合、医師による診察の機会が減りますが、その代わりに地域の保険薬局の薬剤師が薬の受け渡し時に服薬状況や副作用などを確認します。しかし、体調に異変を感じた場合には、医療機関を受診するようにしましょう。

できるだけ同じ薬局で薬を受け取りましょう

薬を受け取る薬局を1回目と2回目以降で変更することは可能ですが、薬局が異なると、普段服用している薬の情報把握や相互作用などの確認が不十分になる危険性があります。また、最初に薬を受け取った薬局では、2回目以降の薬をあらかじめ準備している場合もあります。逆にいうと、2回目以降、別の薬局に行く場合は、薬がすぐに準備できないこともあります。そのため、同じ薬局で薬を受け取る方が望ましいですね。


参考資料
厚生労働省「令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)」
日本保険薬局協会「リフィル処方箋の手引き(薬局版)Ver.1」
健康保険組合連合会けんぽれん「リフィル処せん」

※掲載している情報および解説者の所属・役職は、本ページ公開当時のものです。

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