演出家の鈴木雅之さんといえば、「HERO」シリーズ、映画『マスカレード』シリーズなどを手がけたヒットメーカー。昨年は、二宮和也、中谷美紀、大沢たかおの3人を主役に迎え、「たった1日の出来事」を1クールのドラマに仕立てました。DVD化にあたり、3人の魅力や本作の見どころ、演出のこだわりについて聞きました。

　二宮和也さんの“逃亡編”、中谷美紀さんの“地方テレビ局編”、大沢たかおさんの“レストラン編”、3つの物語が同時進行していく連続ドラマ「ONE DAY～聖夜のから騒ぎ～」を演出。これまで数え切れないほどのドラマを撮ってきたが、こんな斬新な試みは初めてだったという。

「作品の質と時間との闘いを求められるTVドラマでは不可能な、まさに映画の企画です。でも、TVが挑戦する価値はあると思いました。目指したのは、3つの話をクリスマスイブの1日を通して徐々に集約し、最後に小さな奇跡が起こるファンタジーです」

　ただ、3人の主役以外にも大勢のキャストがいて、全員が生き生きと描かれなければせっかくの心意気が仇になってしまう。しかし、そこは「HERO」「ショムニ」といった群像劇で知られる鈴木監督のこと。準備期間がないなかでも一人ひとりに明確な性格を提示し、“その人がいる意味”を重視したそう。「それぞれのキャラクターを立て、意味を積み重ねることがドラマの骨になる」と語る。

「なかでも主役の3人が自分の世界観をまっとうしてくれたことによって、この複雑なドラマも最後まで完走できた。絶体絶命のピンチに立たされながらも『今日という日を良き日にしたい』とがんばる彼らの姿を、みなさんにも見届けていただきたいですね」

文：みやじまなおみ　写真：安友康博(機関誌「済生」2024年7月)