2025.11.04

板垣 李光人 さん

板垣 李光人 さん

2002年生まれ。2012年に俳優デビュー。たしかな演技力と唯一無二の存在感が注目され、2024年、映画『八犬伝』『はたらく細胞』『陰陽師0』で第48回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。ほかにも、映画『ブルーピリオド』(2024)、『ババンババンバンバンパイア』(2025)や、ドラマ「秘密~THE TOP SECRET~」「しあわせな結婚」「ばけばけ」(すべて2025)など、ジャンルを問わず話題作への出演が続く。俳優業のほか、アートの分野で個展を開催したり、初めての絵本『ボクのいろ』を発売するなど多岐にわたり活躍の場を広げている。

終戦80年を迎えた今年、かわいいタッチで戦争の壮絶さを描いたアニメ映画『ペリリュー』で功績係を務める田丸均を演じた板垣李光人さん。実際に戦跡を訪れ、声優として挑んだ収録の裏側、そして、自身の心の支えについて語っていただきました。

若手俳優の中で最も勢いのある一人、板垣李光人さん。「近年の世界情勢を通じて、戦争が一気にリアルなものとして迫ってくる中でこの作品に携わり、田丸均という役に命を吹き込むことに大きな巡り合わせと責任を感じています」と真摯(しんし)に語る姿から、俳優としての覚悟が伝わってくる。

特にペリリュー島を訪れた経験は大きかったという。「当時の瓶の破片がそのまま残っていて、洞窟にはカニがいました。もしかしたら兵士たちも捕まえて食べていたのかもしれないと、80年前に思いを馳(は)せながら、足裏の感触やにおい、空気などを五感で味わったことがアフレコの助けになりました」

そんな板垣さんが心の支えにしているのは、周囲からもらう言葉だ。「自分の表現はどうだったのか、正解がないのが芝居の世界。生きている間、自分に100点は出せないと思います。でも、監督やプロデューサーの方から『よかった』と言われると救われる」。だからこそプレッシャーを背負いながらも、次の作品に進めるそう。

それでもマイナスの感情は出てくるが、自らが描くアート作品にぶつけることがデトックスになるという。さらにオンオフを切り替えたいときは「寝るのが一番」と板垣さん。「15分でも30分でも、“無意識”の時間が生まれることで気持ちに余白ができ、素の自分に戻るきっかけになります」

文:みやじまなおみ 写真:大村祐里子(機関誌「済生」2025年11月)
ヘアメイク:KATO(TRON) スタイリスト:稲垣友斗(CEKAI)

映画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』

映画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』

美しい南の楽園・ペリリュー島で起こった恐ろしい戦いを史実に基づいてアニメ映画化。太平洋戦争末期の昭和19年、攻める米兵4万人に対して、迎え撃つ日本軍は1万人。その一人である漫画化志望の田丸均はその才を買われ特別な任務を命じられる。それは仲間の最期の勇姿を遺族に向けて手紙を書き記す「功績係」という仕事だった。日本兵は次第に追い詰められ、玉砕も禁じられた持久戦を強いられてゆく。最後まで生き残った日本兵はわずか34人。若き兵士が戦場で見たものとは。

● 原作:武田一義『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』(白泉社・ヤングアニマルコミックス)
● 監督:久慈悟郎 
● 脚本:西村ジュンジ、武田一義
● 声の出演:板垣李光人、中村倫也、天野宏郷、藤井雄太、茂木たかまさ、三上瑛士 ほか
●配給:東映
● 2025年12月5日(金)より全国ロードショー
©武田一義・白泉社/2025「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」製作委員会

板垣 李光人 さん


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