伊藤 蘭 さん
いとう・らん 東京都出身。73年、アイドルグループ「キャンディーズ」で歌手デビュー。78年の解散後、テレビドラマや映画、劇作家・野田秀樹主宰の劇団「夢の遊眠社」公演などに出演。女優としての活動を本格化させる。主な出演舞台に『怪談 牡丹燈籠』、『東京月光魔曲』『シダの群れ』『血の婚礼』『祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~』『太陽2068』『青い瞳』などがある。
“10歳の女の子”役に挑戦。ときを重ねて、さらに日々を楽しむ。
女優として、そして良き家庭人として、
公私ともにいま円熟のときをむかえている伊藤蘭さん。
話題の新作舞台で、驚きの”ある役”を演じる。
「えっ、私が10歳の小学生役?」
三谷作品には待望の初参加。「10歳」という奇想天外な設定を知り驚いたという。
10歳だと、小学4年ごろ。「そのころは思春期一歩手前ですね」と自身を振り返る。
「鉄棒に服を巻きつけて足かけ上がりをしたり、ゴム跳びをするお転婆な子でした。50円の週刊少女マーガレットが毎週楽しみだった。まだ歌手の夢はなかったかな」。役づくりの課題は「実年齢との差をどれだけ埋められるか、ですね」と苦笑する。
オフには最近興味をもち始めた”フランス刺繍”をすることも。外国の作品に感動し、刺繍キットを買ったそう。基本ステッチをコツコツ練習中で、いずれは自身の図案で作れたらと目を輝かせる。
「いったん始めると集中しちゃうんです。食事も寝るのも忘れて。声かけられても生返事。ちょっと危険かも」と話す。
夫は俳優の水谷豊さん。一人娘の趣里さんも両親と同じ道を歩んでいる。
「両親と同じ職業を選んでくれてうれしい。娘は父親に似て、精神力が強い人。だからあまり心配はしていません」
家族と演技について語り合う時間も楽しいという。無心に鉄棒を回っていたおてんば少女は、やがてアイドルとなり一世を風靡。それから40年余り、穏やかであたたかく包むような笑顔は、ときを超えて可憐に咲き続ける花のように映る。
「日々を繰り返してきただけという感覚と、ずいぶん長い道のりを歩んできたなという二つの想いがあります。年を重ねて、肉体が衰えていくのは当たり前のこと。それを悲観してもつまらない。心意気ひとつで人生はさらに楽しめるはず」とほほえむ。
ささやかに抱く夢は親子三人での旅。
「もう長いこと行っていないので。でもみんな忙しくて無理ですね、きっと(笑)」
文:浜口恵美子 写真:安友康博(機関誌「済生」2017年6月)
ヘアメイク:西山舞(LUGAR)
スタイリスト:石田純子(オフィスドゥーエ)
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