ある日突然、5人の身体(からだ)が入れ替わり、自分以外の秘密や悩み、コンプレックスが浮き彫りになる映画『GONZA』に出演した坂巻有紗さん。体当たりで一人二役を演じた撮影時の様子を語ってくれました。この作品で女優の面白さに開眼。今後、思い描いている夢とは？

　坂巻有紗さんがヒロインを務める本作は、ただ身体が入れ替わるだけの映画ではない。出演時を振り返り、「車いすユーザーやLGBTQを含めた多様性に向き合い、当事者目線で社会を見ることの大切さを深く感じながら演じました」と語る。

　また、主人公の拓海と魂が入れ替わり、二人の人間を同時に演じることも大きなチャレンジだったそう。「お箸(はし)の上げ下ろしから歩き方、何から何まで拓海役の上村さんを観察して、対話もたくさんしました。難しかったですが、女優としてとても勉強になりました！」

　自分ではない誰かになるのが女優の仕事だが、「今は役を通してさまざまな人生や考え方に触れ、人として成長できることが大きな喜び」と坂巻さん。ただ、監督にNGを出されて落ち込むことも。「小さなことでも、言われると全部受け止めてしまう。その日は泣いて(笑)。でも、自分の部屋に戻り、大好きな音楽を大音量で流してストレス発散したあとは、監督に言われたことを明日に生かそうと気持ちを入れ替えます」

　将来は、音楽フィールドにも軸足を持ち、海外進出したいという夢を持つ。「祖父がアイルランド系アメリカ人で、何度か祖父の祖国のアメリカに足を運ぶうちに、国を飛び越えて人を元気にしたいと思うようになりました。天国にいる祖父に『アメリカでも活躍しているよ！』と報告できるようこれからもがんばります」

文：みやじまなおみ　写真：安友康博(機関誌「済生」2023年6月)