デビューのきっかけがインスタライブやTikTokの配信と聞くと、いかにもイマドキの若者のイメージ。しかし、その内面は「子どもと映画が好きでたまらない」と熱いエネルギーであふれていました。これからの活躍が楽しみな俳優、岸慎一郎さんが芸能界デビューをつかむまでのリアルストーリーを聞きました。

「もともと子どもに関わる仕事に就きたかった」と岸さん。きっかけは7年前の熊本地震。当時高校3年生だった岸さんは自らも被災するなか、避難所で子どもの面倒を見ていたという。「大人たちは自宅や店舗の復旧に追われ、僕ともう一人が何十人もの小さい子の遊び相手をしていたんですが、ここにおもちゃが一つでもあればみんなをもっと笑顔にできるのに……という状況でした。それで将来は玩具メーカーに就職しようと思っていました」

　ところが就活は思うように進まず、もう一つの夢を叶えようと、ある行動をとる。「小さい頃から映画が大好きで、年間700～800本映画を観ていました。自分が俳優になれば、子どもたちにもっといろいろなメッセージを届けられるかもしれないと思ったんです。“だったら自分を露出しないと！”と半年間、SNSで動画を配信し続けた結果、卒業間際に今の事務所にスカウトされました。画面上では爽やかで面白いイメージ、でも内心は“今やり切らなきゃあとがない！”と必死でした(笑)」

　昨年、出演した舞台『逃走中 THE STAGE』には子どものキャストが多く、「いきなり夢が一つ叶いました！」と屈託のない笑顔を見せた岸さん。目標とする俳優にジム・キャリーの名を挙げる。「実は男前なのに変顔に躊躇(ちゅうちょ)がなくて振り幅がすごい。子ども時代の僕のヒーローです。そんな役者を目指してがんばっていきます！」

文：みやじまなおみ　写真：安友康博(機関誌「済生」2023年7月)