社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)社会福祉法人 恩賜財団 済生会(しゃかいふくしほうじん おんしざいだん さいせいかい)

薬剤師が教える薬のキホン

2022.10.11

Vol.06

複数の薬を飲んで体調不良? それ「ポリファーマシー」かもしれません

高齢化に伴って、さまざまな病気を抱え、複数の薬を服用している患者さんが近年増えてきています。そこで問題になるのが「ポリファーマシー」です。複数の薬を飲み合わせることで身体に悪影響を及ぼす心配があります。ポリファーマシーの問題点を把握して、しっかりと対策をすることが求められています。

重い症状が現れることも

「ポリファーマシー」とは、英語の「poly(複数・たくさん)」と「pharmacy(薬・調剤)」から作られた言葉です。「多剤服用」や「多剤併用」などとも呼ばれます。 複数の薬を服用することで、副作用の増加、服用方法・服用量の間違い、飲み忘れの発生など、患者さんの健康状態に何らかの弊害(有害事象)をもたらすことを指します。
なお、複数の薬を服用した結果、患者さんに害をもたらすことをポリファーマシーと呼び、単に服用する薬の種類や量が多いだけではポリファーマシーとはいいません。

ポリファーマシーの有害事象では、めまいやふらつきのほか、意識障害、低血糖、肝機能障害など重い症状が現れることがあります。あるいはふらつきや転倒が骨折の原因となり、QOL(生活の質)を大きく低下させることもあり得ます。
特に高齢者は生理機能や代謝機能の衰えにより、有害事象が現れる可能性が高く、十分な配慮が必要となります。

何種類の薬を服用するとポリファーマシーのリスクが上がるかについては、厳密な定義はありません。ただ、6種類以上の薬を服用するとポリファーマシーの危険性が大きく高まるといわれています。

手のひらにたくさんの薬を持っている白髪の高齢者

どうしてポリファーマシーが起こるのか?

ポリファーマシーが起こる背景として、高齢化が挙げられます。
年齢を重ねるにつれて、複数の病気を抱えることが増えていきます。患者さんによっては1カ所の受診では済まず、複数の病院で診てもらうといったことも起こります。その結果、別々の病院で処方された薬を同時に服用するにようになるわけです。
また、認知症がある場合、薬の飲み忘れが起こりやすくなります。医師は患者さんが薬を正しく服用していることを前提としているため、飲んでいる薬が患者さんには効いていないと判断し、本来必要のない薬を新たに処方してしまうことがあります。
上記以外にも、ポリファーマシーの原因として、服薬による有害事象を別の薬で対処し続ける「処方カスケード」が挙げられます。

ポリファーマシーを引き起こす「処方カスケード」

ある患者さんが最初、高血圧で病院を受診し、そこで処方された薬を服用します。するとその薬によってむくみが出てきます。患者さんはむくみが薬の副作用と思わず、別の医療機関を受診し、医師が利尿剤を処方します。そして頻繁にトイレに行くようになり、今度は頻尿を診てもらうために受診した泌尿器科で処方された頻尿治療薬を服用するようになります──。
このように患者さんはそのときに抱えている症状を和らげるため、医療機関の受診を繰り返し、そこで処方された薬の副作用と気づかないまま症状を緩和させようとどんどん服用する薬が増えていきます。こうした状態が「処方カスケード」です。ポリファーマシーを引き起こす原因となるため注意が必要です。

何件も病院を回り、たくさんの薬を処方されてしまう高齢者

ポリファーマシーを防ぐ鍵は「情報共有」

昨今、医療技術の進歩に伴って薬の種類が増え、患者さんが薬を併用する機会が増えており、ポリファーマシーのリスクが高まっているといえます。さらに国民皆保険制度により、医療機関を受診しやすい点もポリファーマシーの原因となっているのかもしれません。国民医療費が伸び続けるなか、飲み残され、無駄になっている薬剤費は年間500億円もあるといわれています。

薬の飲み残しを減らし、ポリファーマシーによる有害事象を繰り返さないためには、どうすればよいでしょうか?
キーワードは「情報共有」です。かかりつけ医やかかりつけ薬剤師を持ち、病気の状況や処方されている薬について情報共有を行なうことが大切です。その際にお薬手帳を活用すると医療従事者とのコミュニケーションがより円滑に進み、ポリファーマシーの予防につながりやすいため、ぜひ利用してみてください。
また、認知症などで患者さん自身が医療従事者と情報共有するのが難しい場合、家族や周りの人がポリファーマシーについて気をつけるのも大切です。

なお、複数の薬を飲んでいて気になる症状があるからといって、自分の判断で飲む薬の量を減らしたり、服薬をやめたりすることはやめましょう。
薬の種類が多くても、すぐに減らすべきとは限らないからです。場合によっては、服薬をやめることで予期せぬ有害事象や症状の悪化を起こす可能性もあります。
薬の量が気になる際は、まずは医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

Vol.05 薬の保管、きちんとできていますか? Vol.07 退院するときに薬の取り扱いで注意すべき4項目とは?