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ネパール大地震に対する医療支援

臨床工学技士として「機能拡充をカタチ」に 済生会横浜市東部病院 臨床工学部主任 森實 雅司
写真はいずれもJICAの提供


筆者


透析装置


バラビセ村


小島さん(左)と筆者

 私は、国際緊急援助隊・医療チーム一次隊(46人)の臨床工学技士として、4月28日から5月11日までネパールに派遣されました。今回の医療チームは日本初の機能拡充チームで、手術・透析・入院機能を持っています。臨床工学技士はこれまで「医療調整員」とされていましたが、機能拡充に伴い、初めて「臨床工学技士」として派遣されました。

 大規模な地震災害では、外傷患者とともにクラッシュ症候群患者が出る可能性があり、医療活動には透析機能が求められます。クラッシュ症候群とは、圧迫により壊死した筋肉から発生した毒素が、圧迫開放とともに血流で全身に回り、高カリウム血症による急性心不全などを起こす症候です。日本では、阪神・淡路大震災時に認知されるようになりました。
 機能拡充チームは、麻酔器や透析装置など20台を超える医療機器を使用します。臨床工学技士(2人)のミッションは、これらの医療機器を現地で速やかに操作し、手術や透析などを可能にすることでした。

 29日、首都カトマンズに到着しましたが、空港は各国からの支援物資のため混雑し、手術などに必要な機器がすぐに搬入されませんでした。このため医療チームから先遣隊が出て、5月1日、バラビセ村で外来診療を開始しました。本隊は3日までカトマンズで足止めを食らい、すぐ活動できないことにもどかしさを感じつつ、透析などの診療シミュレーションや医療機器の点検・充電をしました。
 すべての機器の搬入後、4日にバラビセ村の先遣隊と合流。手術で使う機器の組み立てや設置、点検、電源の管理を行い、麻酔科医や看護師と入念に打ち合わせ、5日、ついに手術が始まりました。手術が終わり、無事患者さんが退室した瞬間、初めてホッとしました。あの時の感動は生涯忘れられないと思います。幸い、透析が必要な患者さんはいませんでした。

 活動中はハプニングの連続でしたが、同じ臨床工学技士の相棒(埼玉医科大学総合医療センター・小島達也さん)に恵まれ、「機能拡充をカタチにする」ミッションを果たせました。ネパールでの経験を、今後の災害支援活動に生かしていきたいと思います。
 被災地が一日も早く復興し、被災した方々が健やかな日々を送れるよう心より祈念します。